IPよもやま話
IちゃんとP(パパ)小野田君の会話が続きます。
パパ、今日は一番基本的な用語だった「通話規制」について 話してくれるんだったわよね。 私、東日本大震災の3月11日に、仙台のお友達と携帯で電話したかったんだけど、何回かけても駄目だったの。それが「通話規制」だったんでしょ?
うん、そうだね。
東日本大震災では、携帯電話だけでなく加入電話(固定電話)でもつながり難くなる現象がおきたね。先ず、固定電話の話をしよう。
これは、単に回線が混んでいたからではないんだよ。愛ちゃんの言う通り「NTTが一般の電話からの発信を規制」したからなんだよ。
高速道路の車が大渋滞したら、ゲートが封鎖されるようなものなんでしょう?(図1)
図1 「通話規制」を「高速道路の交通規制」に例えると
うんうん。そのとおり。
発信規制の理由は、いままで勉強した「消防・警察への緊急通報や電力・ガスといったライフラインにかかわる機関への通報などを優先するため」なんでしょう?
うんうん。その通りだ。
しかし、実は、もう1つあまり知られていない理由があるんだよ。
えーっ!それって何?
それはね「電話局の交換機のパンクを防止する」ことなんだ。
えーっ!交換機ってパンクするの?
はっはは。例え話さ。でも、本当にそうなるんだよ。
昔ね、アメリカのルーズベルト大統領が亡くなったとき、地元の電話局が「お悔み電話ラッシュ」で「ハイアンドライ(お手上げ状態)」(注1)になったことや、スプーン曲げのユリ・ゲラーが来日して、テレビ出演の際の放送局(NTV)への電話殺到で四谷電話局が同じようにパンクしたことがあったんだよ。
でも、高速道路に例えてくれたけど、いくら渋滞しても高速道路は崩壊しないわよね。
図2 無効呼の異常発生
そうだね。
愛ちゃんの言うとおり、1000人しか同時通話ができない交換機に1100人が電話をしようとダイヤルしても問題はないんだよ。
「話中音」を送って受け付けないだけだからね。
しかし、災害になると「話中音」を送っても、何度も何度も掛けなおす人が溢れるだろう。このような無駄な発信のことを無効呼というんだが、この異常発生で大輻輳状態(注2)になるのが「パンク状態」(処理不能状態)なんだ。
そうならないように工夫はないの?
NTTのホームページでは、(注2)に続けて「輻輳が集中的に発生すると、交換機の処理量も比例してどんどん増えることになり、やがては交換機の処理自体が停止してしまう恐れがあります。」「交換機の処理が限界に達すると、トラヒック制御装置に対して輻輳の通知を行ないます。」そして、「接続量の制御を行なうことで交換機のパンクを防ぎます。」と説明しているんだよ。
有難う。大体分ったわ。
携帯電話も同じことなの?
基本的には同じことだが、携帯電話は「いつでもどこでもかかる携帯できる電話」だから、災害時にはみんな頼りにして、使う人が激増することになるね。
そこで、携帯電話各社は、通話規制を実施することで、輻輳が他の地域に広がることを防ぐんだ。
今、説明したように、一般に電話ネットワークの輻輳は、交換機で発生する。通話が集中して交換機の処理能力を超えてしまうことが原因だね。
ところが、携帯電話ネットワークにおける輻輳は、交換機だけではなく、携帯電話との無線通信を受け持つ「携帯電話基地局(アンテナ)」でも発生する可能性があるんだよ。
(図3)
図3 携帯電話輻輳(交換機と基地局両方で発生する可能性あり)
<補足>
下記の状況が発生する。
パパ。具体的に説明して!
災害の発生地では、沢山の人が一斉に携帯電話を使おうとすると、基地局が持っている無線チャネル数を上回ってしまうんだ。
携帯電話を車に例えれば、高速道路(無線チャネル)に乗りきれないことになるね。
勉強したが、基地局が停電などで停止していれば、輻輳はより起こり易くなるね。
輻輳で起こる通信障害を防ぐために、携帯電話各社は、やはり「通話規制」を基地局と交換機の2ケ所で行なうことになるんだ。
その方法は
を行なうことになるんだよ。
でも、その場合でも、自治体や消防署・警察などに提供されている「優先通話」は、優先的に通話ができるんでしょ?
そうそう、勉強したことを覚えていたね。感心、感心。
一般の携帯電話でも「110番」や「119番」などは、規制の対象外になるね。