IPよもやま話
IちゃんとP(パパ)小野田君の会話が続きます。
図1 NGNはこれから主役
パパ、今日は「これからのインフラの主役(図1)のNGNと災害(停電)対策」について 話してくれるんだったわよね。
NGNは、今まで何度も勉強したように「これからの主役」ですものね。
そうだったが、少し気が重いね。
どうしたの?
NGNの話になると結構「格好のいい話」ができるんだが、災害対応の話になると、あまり威張れないんだね。
どうしてですか?
まず「IP電話には“災害優先電話”」は無いし「停電時の通話は不可能」なんだ。
「110番」「119番」の緊急電話も、NTTは出来るが、KDDI(光ダイレクト)はできないしね。
ひかり電話は「フレッツ・光」の回線上で提供される電話サービスなので、基本的に停電の時には110番、119番等への通報も含めて利用が出来ないんだよ。
固定電話(アナログ加入電話)やINSネット64の場合、NTT局舎からメタル線路を通して電話機端末までの給電(局給電)が行われているため、停電時にも利用可能なんだ。
NTTによる「災害時の優先的な通信の確保」(災害時優先電話)の対象外であるため、いまは、災害時優先電話回線としても採用はできないんだね。
えーっ!
だってこれからはNGNに変わっていくんでしょう。(注1)
災害対策の出来ていない通信インフラなんて無責任じゃないの?
頭にきたようだね。
NTT東日本によれば,「現時点ではユーザー回線には適用していないが,NGN網の機能で優先電話の仕組みの検証は進めている」というんだ。
NGNの場合,加入電話網と異なり,同じインフラで音声だけでなく映像などのデータ通信用にも帯域を確保する機能を提供しているね。
こうした点を考慮した上で,加入電話と同じように優先的に通話を確保できるかをNGN網の中で検証している段階だというんだよ。
総務省の指導も無いんですか?
図2 災害対策検討中
<補足>
光電話の「災害優先電話利用」に
ついて、各キャリアが検討中。
鋭い質問だね。
実は、IP電話を災害時優先電話として使うには、通信設備の増強など新たな投資が必要なので、最大手のNTTはコスト負担を嫌って対応していなかったんだ。
しかし、総務省は、IP電話の契約数が固定電話からの移行で急速に進んでいる(注2)ことなどから、事業者側に対応を促すべきだと判断してね。電話も利用できるようにすることをNTTなど通信事業者に義務付ける方針を決めたんだよ。省令の改正もすることとしたんだ。
このことは、新聞報道もされている。(注3)
それで、NTTは、光ファイバー回線を活用した次世代ネットワーク(NGN)のIP電話を災害時優先電話として利用可能にする方向で検討しているんだ。
じゃあ、NGNは威張っていられないわね。
早く検討してくれないと、大震災はまた来るかもしれないし、加入電話並みの災害対策ができないと「真のインフラ」とは言えないもの!
いやいや、今回は愛ちゃんの怒り爆発だね。
実はね、NGNのフィールドトライアルが行われたとき、災害関係で2つのサービスのトライアルを実施しているんだよ。(注4)
それは、(1)緊急地震速報配信サービストライアル
(2)災害時安否情報共有サービストライアル
なんだ。
やってるんだ。
それってどんなサービスなの?
うん、先ず(1)の「緊急地震速報配信サービストライアル」は、図3のようなもので、「地震発生時に気象庁が発表する緊急地震速報をNGN上で配信する実験なんだ。
NGNのQoS(注5)やSIP(注6)によるセッション制御機能の活用により確実なデータ伝送を実現し、防災、減災に役立つ有益な情報として、予測震度と主要動(大きな揺れ)が到達するまでの時間を知らせることが可能となるものだよ。
図3 緊急地震速報配信サービストライアルのイメージ
出典:NTTニュースリリース(平成19年2月14日)より作成
(2)の「災害時安否情報共有サービストライアル」は、図4のようなもので「災害発生時、避難所に避難してきた住民の安否情報を迅速かつ簡便に集約しネットワーク上に蓄積することで、親族等が被災者の安否情報を安全にネット上で検索可能とするシステムの実験なんだ。
NGNのQoS機能の活用、映像処理技術の応用により、被災地からの確実な高精細映像の伝送と迅速な安否情報の共有が可能となるんだね。
結果はどうだったの?
うん。結果が公表されたかどうか把握していないが、当然、その結果が検討中の「災害対策」に反映されると思うよ。
各キャリアの検討に期待しよう。
これで「災害と電話」のシリーズは、一応終わったんだが、次回のテーマは何にするかな?
そうですね。
実は「インターネットFAX」について勉強したいんです。
次回のテーマにしてくれませんか。
いいとも。
図4 災害時安否情報共有サービストライアルのイメージ
出典:NTTニュースリリース(平成19年2月14日)より作成