IPよもやま話
IちゃんとP(パパ)小野田君の会話が続きます。
パパ、今日は「携帯電話が災害に強くなるよう改善される」って話だったわよね。
うん、そうだったね。
私、とても興味があるの。
災害のときこそ「携帯電話」を使いたいし、役に立たなければ意味が無いって思うから・・。
そうだね。
今度の「東日本大震災」でも、携帯電話がかかりにくくて問題になったね。
いくら想定外の大災害とはいえ、最大で約2万9000局もの基地局がサービスを停止したほか、震災直後は輻輳(ふくそう)によって通話しづらい状態が続いたんだね。
そのことを受けて4月下旬に当面の復旧を終えた携帯各社は、「“落ちない”基地局と“つながる”通話」を目指して、新たな対策に着手したんだよ。
わぁー、凄いな!
さすが、「技術大国ニッポン」ね。
はっはっは、大きく出たね。
もう勉強したが、携帯電話の基地局(アンテナ)のウィークポイントは停電時の対策、つまり電源(バッテリー)にあるよね。
東日本大震災における携帯基地局の停止の要因として、最も多かったのは商用電源の停止だったんだ。その数はおよそ約7割に上って、基地局の設備自体には損傷がなかったにもかかわらず、停電によってサービスが停止したんだね。(図1)
でも、その停電対策としてバッテリーで3時間程度補償できるんですよね。
そうだ。しかしそれを超えると機能が停止してしまう。そこで各社が“落ちない”基地局としてまず取り組み始めたのが、基地局のバッテリーの強化だ。
それが図1と図2だ。
図1 基地局の改善(バッテリー強化他)
<補足> 広域をカバーする基地局設置や基地局バッテリーの「耐用時間の延長」を進め始めた。
図2 携帯電話基地局の改善
具体的に説明して!
いいとも。
先ず、図2の「対策(2)」だが、キャリア3社の状況を具体的に話そう。
表1を見てくれないか。
表1 基地局の改善策:バッテリー強化
項 | 携帯電話事業者 | 基地局改善策 | 実施状況 |
---|---|---|---|
1 | NTTドコモ1 | 約800の基地局を、エンジンをつなぎこむことによって無停電化し、さらに約1100の基地局で24時間バッテリー稼働を可能にする計画を打ち出した。(注1) | 既に設置場所の洗い出しを終えており、人口の約65%をこれらの基地局でカバーできる計画という。 |
2 | KDDI(au) | 基地局バッテリーの強化(通常用いる鉛のバッテリーではなく、より軽いリチウム型のバッテリーを使えないか)を検討。また、太陽光発電を用いたトライブリッド基地局を実験的に運用している。(注2) | 検討中 |
3 | ソフトバンク | 後述の表2の基地局では「バッテリーも48時間程度持たせるようにする」としている。 |
あら、携帯電話事業者全部じゃないの?
うん、いまのところ公表していないが、ドコモ以外も検討しているよね。
対策(1)についても教えてください。
“落ちない”基地局に向けたもう一つの取り組みは、エリアの冗長化だ。通常の基地局とは別に、より堅牢で広域をカバーする基地局を設けたり、移動電源車や井戸基地局などで、回線断や停電などによって本来の基地局が停止した場合にバックアップとして利用するアイデアだね。これについて、整理したのが表2だ。
表2 基地局の改善策:基地局の冗長化等
項 | 携帯電話事業者 | 改善策 | 実施状況 |
---|---|---|---|
1 | NTTドコモ1 | 1) 都道府県ごとにおよそ2カ所ずつ、半径7kmの大ゾーン型の基地局を新設する。設置場所は耐震性の高いビルや鉄塔を選ぶほか、基地局の無停電化、エントランス回線の冗長化を図る。(災害が起きたときだけ大ゾーン基地局のスイッチを入れる仕組みで、これによって広い地域で効率的に通信路を確保できる。 2) 可搬型移動無線基地局車の配備や移動電源車の配備 |
実施中 |
2 | KDDI(au) | 大規模災害発生時に、早期にエリアを復旧できるよう、設備対策を強化する。具体的には (1)移動電源車と非常用発電機の配備を合わせて、現在保有する55台から130台に増強 (2)非常用無線エントランス設備を、現在保有する40区間分から20区間分追加配備して計60区間とし、災害時に固定回線が被災しても、携帯基地局と交換局間の通信を確保できるようにする。 |
実施中 |
3 | ソフトバンク | 1) 同社独自のアイデアや工法(40〜50m級の鉄塔)を用いて、新たにもう一層、全国をカバーするエリアを作るというで、基地局の冗長化によって震災に強いネットワークを作るプランを練っている。 2) 基地局が災害により停電し、それが長時間におよぶと想定される場合は、「移動電源車」を出動し電源を確保する。 「移動無線基地局」の例 |
1) 既に、どの程度の金額やスピードで鉄塔を建設できるのか、実際に実験局 を建てながらノウハウを蓄積しているという。同社は2年間で1兆円規模の設備投資を実施することを表明している。(注3) 2)実施中 |
そうですか。「災害対策」として「基地局の改善」を行う施策が進められているんですね。移動電源車とか移動無線基地局で、各エリアを対応するようになったんですね。
まだ、携帯4社の足並みは完全には揃ってはいないが、今度の災害が「携帯電話の対災害耐力」の向上を促しているんだ。
その対策には、いままで説明した「基地局の改善」の他にも大きな工夫が1つあるんだよ。
えーっ、まだあるの?
図3 お年寄りはメールより電話
お年よりは、メールよりも電話に頼る傾向があるんだそうだ。また、パニック状態のときは、まず使いなれた電話を使うよね。
そこで、NTTドコモでは、「音声ファイル型メッセージサービスの開発」に着手したそうだよ。
それって、どんなものですか?
通話規制時に音声発信してつながらなかった場合に、端末側でメッセージを録音してファイル化。パケット網を通じて相手にメッセージを送信する仕組みだ。
まずはNTTドコモのスマートフォンユーザー間を対象に、今年度中に提供したいとしているんだよ。
災害時に輻輳が起きてつながりにくくなる回線交換を避けて、パケット網を通して音声をファイルの形で送信するサービスなんだ。
いろいろ改善されるのね。
災害は無いほうがいいけど、きたら電話の必要性は大きいし、どんどん改善や進化をして欲しいわよね。
日本は災害大国だが、タイの大洪水やトルコの大地震など、世界中が「大災害」に見舞われているね。携帯やスマホが「災害時に役立つような工夫」が、これからも続けられていくだろうね。
今回も大変勉強になったわ。
次回は、何のお話かな?
ますます楽しみになってきたわ。
そうだね。
少し話題が地味になるが「通話規制」について話そうと思う。
お願いします。
「通話規制」って漠然と分っているつもりですが、実際はどうなっているのか理解していないので、是非、聞きたいです。