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IちゃんとP(パパ)小野田君の会話が続きます。

イラスト

Iちゃん

パパ、今日は「災害と電話について」話してくれるんだったわよね。

Pパパ

図1  歩いて避難
歩いて避難

そうだったね。
この3月11日の「東日本大震災」の日はどうだったかね?

小野田君

それは大変でした。
帰りの電車が無くて、2時間半もかかって歩いて帰りました。
そのとき「携帯電話」がちっともかからなくて閉口しました。

Iちゃん

固定電話もかからなかったわよね。
でも、PHSは比較的かかり易かったとも聞いたんだけど・・・。

Pパパ

そうか、では、本題の「災害と電話」の話をしよう。
まず、災害といろいろな電話について、「災害時にかかり易い順」に見ると、図2のようになるんだ。
公衆電話、加入電話、IP電話、PHS,携帯電話、衛星電話などがあるが、災害時に一番強いのは衛星電話が一番強いんだが、あまり身近ではないので、今回は、それは最後にして“公衆電話”について話すことにしよう。

Iちゃん

災害に強い公衆電話
災害に強い公衆電話

えーつ!「公衆電話」が一番強いの?
だって、いま「公衆電話」ってあまり無いじゃあないのー!

Pパパ

公衆電話には「発信規制」がないからね。
「発信規制」の切り口で見ると、固定電話、PHS、携帯電話全てにあるからね。
災害発生時、公衆電話回線は優先される回路となり、携帯電話が繋がりにくくても、公衆電話は繋がるということになるんだよ。
ただ、愛ちゃんの言うとおり「公衆電話機数は減少」しているんだね。

図2 災害時にかかり易い電話の順序
災害時にかかり易い電話の順序

実は、NTTにとって「公衆電話事業は赤字」(注1)なんだ。
ここ10数年で駅や街角から急速に姿を消しつつあるのが公衆電話。10数年前の半分以下になっているのが現状で、その理由はもちろん携帯電話の急速な普及なんだ。
10円玉やテレホンカードを握りしめて使っていたのは今や昔。防災上の利点から必要性を指摘する声もあるんだが、コスト面から減少傾向は止まらないようだね。

NTT東西のまとめによると、2000年3月(平成12年3月)に、73.6万台だった公衆電話の台数は携帯電話が普及と共に減少を加速し(注2)、2010年(平成22年)3月には23.8万台にまで減少したんだ。ここ10年で1/3まで減少したことになるんだ。

Iちゃん

じゃあ普段から「公衆電話のある場所」を知っておかないと駄目ってこと?

小野田君

いやいや、それは無理ですね。
通学路とか出勤ルートとか、普段の行動範囲なら別ですが、この前、歩いて家に向かうとき「公衆電話」を探しましたが、なかなか見つかりませんでしたし、聞いた話ですが公衆電話の前には「長蛇の列」だったそうですよ。

Iちゃん

駄目ですね。何か災害に対する基準や対策のようなものは無いの?

Pパパ

それはあるよ。
災害時に公衆電話の通話を無料化する旨の掲載があるんだ。これは、阪神大震災の際に使用不能となった公衆電話が多数存在したことがあったからだ。
それは、災害救助法が適用される規模の災害で、広域停電が発生している地域としているんだがね。
これは、災害時における公衆電話の金庫充満を回避するためや停電によりテレホンカードが使用不能となっても利用できるよう救済するための措置でもある。
ただし、無料化措置実施中でも、一部機種を除いて硬貨もしくはテレホンカード(カードは使用可能の場合に限る)の投入が必要となる場合もあるがね。

災害時の無料化措置実施時に、公衆電話から無料となる通話先は次のようなものがあるんだよ。そしてね、無料化措置実施の設定は都道府県単位でなされるんだ。

  1. 日本国内の固定電話・携帯電話・IP電話
  2. 災害用伝言ダイヤル(「171」)
  3. ナビダイヤル番号(「0570」で始まる番号)
  4. 時報(「117」)・天気予報(「177」、市外局番前置の場合(例:「03-177」)も含む)

ただね、特殊簡易公衆電話(いわゆるピンク電話)は無料化措置の対象外で通常の通話料が課金されるから覚えておくといいね。
また、無料化措置実施中はテレドーム番号(「0180」で始まる番号)(注3)へは掛けられない。

Iちゃん

その無料化は実施されたことはあるの?
今回の東北太平洋沖地震ではどうだったの?

Pパパ

図3 公衆電話の無料化実施(東日本大震災で)
公衆電話の無料化実施(東日本大震災で)
NTT東日本管轄エリアの17都道府県で
実施されました。

うん、阪神淡路大震災以降広域停電を伴う災害救助法の適用する災害は多数発生し、この措置が発動されたことは一度もなかったんだ。
でも、今回の2011年3月11日の「東日本大震災」でNTT東日本管轄エリア、17都道県で公衆電話無料化を実施したんだよ。

小野田君

お父さん、公衆電話と災害の問題は、よく分りましたが設置台数の減少は困りますよね。
何か設置基準のようなものはないんですか?

Iちゃん

わーっ、小野田君「いい質問ですねー」(池上彰の物真似で)

Pパパ

それはあるんだよ。 公衆電話は電気通信事業法によって2種類に分けられる。
「第1種」(10万台強)は戸外での最低限の通信手段を確保するのが目的で、市街地で500メートル四方ごと、その他の地域では1キロ四方ごとに1台を設置しなくてはならないんだ。
もう1つNTTの経営判断で設置、廃止できるのが「第2種」。撤去が相次いでいるのはこの「第2種」だ。

Iちゃん

その「第2種」って何?

Pパパ

これはね、NTT社内の呼び方で、法律(電気通信事業法)上に定義は存在していないんだ。だから「法令上の規制」は存在しなくて、公道以外のビル内設置もできるんだが、NTTの判断で設置したり撤去したりできるんだね。

Iちゃん

今度のような大災害があったら「公衆電話は非常に有効な通信手段」なんで、減らさないようにできないのかな?

Pパパ

そうだね。
今後携帯電話の普及率がさらに上昇するにつれて、公衆電話の必要性は逓減を続け、採算性との問題もあわせ、さらに台数が減少していくことは容易に想像ができるね。
この状況について総務省が調査したところによると、公衆電話は

  1. 高齢者の利用度が高い
  2. 緊急時において必要となる
  3. ユニバーサルサービス制度(注4)によって(赤字でも)維持が義務付けられている

などの理由もあり、「減少傾向は避けられないが、最低限必要数は維持される」ことが確約されているんだよ。

今後は「インフラとして必要な公衆電話数の適切数」の検討も合わせ、公衆電話そのものの意義の再確認が求められてくるだろうね。
愛ちゃんの言うように、今回の歴史的大災害も大きなインパクトを与えることになると思うよ。

Iちゃん

今度のお話は、「災害に対して強い順」で説明してくれてるんだよね。
そうすると、次回は「固定電話」と「携帯電話」ね?

Pパパ

うん、先ずは「固定電話」からにしよう。
「災害優先電話」や「発信規制」や「災害用伝言ダイヤル」とか、話すことはいっぱいあるよ。

Iちゃん

そうなんだ。
いままでも「必要な知識」だったけど、今度の震災で「より必要な知識」になったものね。
よろしくお願いします。

(注1)
公衆電話の赤字:NTT東西で143億円の赤字(2007年2月)
(注2)
公衆電話機数の減少:携帯電話が普及し始めた1995年(平成7年)ごろから減少を始めた。
(注3)
テレドーム:NTTコミュニケーションズによって提供される、大規模な情報提供サービスを可能とする日本の電話の付加サービスで、情報提供者(テレドーム契約者)が,1本の電話回線(テレドーム契約回線)で,多数のユーザーに情報を提供できる。多数のユーザーが同時にアクセスしてもほとんど話中にならないのが特徴。サービス番号は「0180-99XXXX」。契約者は,アクセスできるユーザーの地域を県単位で指定したり、地域別や日別にどれだけの利用があったかを照会できる。
(注4)
ユニバーサル制度:国民生活に不可欠な通信サービスである、加入電話(基本料)、第一種公衆電話(総務省の基準に基づき設置される公衆電話)、緊急通報(110番、118番、119番)は、日本全国で提供されるべきサービスとして、基礎的電気通信役務(ユニバーサルサービス)に位置づけられている。つまり、過疎地のような場所でも、都会と同じようなサービスを同じ料金で受けられるようにするもので、我々も小額だが電話料の中で一部を「ユニバーサル料金」として支払っている。

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「ユニちゃん」
キャラクター「ユニちゃん」

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