IPよもやま話
IちゃんとP(パパ)小野田君の会話が続きます。
お父さん、今日は私の質問の「トラフィックの話」よね。
そうだったね。
IP電話事業者のネットワークのクラスが違っても「トラフィックの規定が“呼損率”で0.15以下」と規定されている意味について説明すればよかったんだよね。
そうなんだけど、もともと電話のトラフィックについての知識ゼロなの。基本から教えて欲しいな。
小野田君はどうかな?
はい、私も実は「トラフィック音痴」で、よく理解していません。
私も勉強したいです。
図1 交通量のこと
分かった。では、基本から行こう。
トラフィックとは、「交通量」と訳せば分かり易いだろう。
よくテレビで「トラフィックレポート」などと言って「高速道路の渋滞情報」などを流しているね。それと同じ「電話の交通量」のことだ。
じゃあ、さっき出てきた「呼損率」って何のこと?
それはね、文字通り「呼んで損をする確率のこと」なんだ。
はっはっは。まさか!そんなこと・・・。(笑)
いやいや本当のことさ。
小野田君の会社ではPBXを使っているね。
外線には“0発信”でかけているだろう?
はいそうです。
そのとき、“0”をダイヤルしても“話中音”になって欠けられないことは無いかい?
たまにあります。一日に何回かですが・・・。
そう、その「呼んでも発信できないので“損”」をする状態があるね。
その確率(呼が発生したときに回線に空きがなくて接続が拒否される確率)のことだ。
例えば、10回電話をかけて1.5回つながらない場合の呼損率は0.15ということになるね。
ははぁ、そういうことね。
分かったわ。
IP電話事業者の網が呼損率0.15(15%)とは、100回かけてかからない確率を15回以下にしなさい、ということね。
それは、呼損率が高過ぎませんか?
私が聞きかじった話では、PBXの外線発信の呼損率は1/50以下とか聞きましたが?
いい質問だ。
じゃあ、PBXをベースにした「やさしいトラフィック理論」の話をしよう。
これで、君達は「トラフィック理論の通」になれるよ。
ぜひぜひ教えて!
では、トラフィックの基本用語を勉強しよう。
それだけで、結構通になれるからね。まず、1番目は「呼量」の意味だ。
先ほど交通量と言ったが、図2を見てくれ給え。
図2 呼量とその単位
呼量の単位は「100秒で考えるHCS(Hundred Call Second=百秒呼)」で表すんだよ。
花子さんと太郎さんが1時間話し続けることを「1アーラン」と言うんだが、1時間では長すぎるので、単位を100秒にするんだ。
そうか、Km(キロメートル)なら大きすぎるので、m(メートル)にするようなものね。
そうそう。理解が早いね。
図3 アーランおじさん
そうですか。1時間電話し続けることを1アーランというんですね。私の会社に長話で1時間くらい話すヤツがいます。今度から「アーランおじさん」て、呼ぼうかな。(笑)
ホホホホ。面白いけど・・・。 パパ、「アーラン」て、どんな意味?
いい質問だ。
有名なトラフィックの学者で、トラフィックの単位になったんだよ。
もうひとりトラフィックで有名な学者に「モリナ」と言う人がいてね、これもトラフィックの単位になっているんだ。
このことは、次回説明しよう。今日は「アーラン」だけ覚えてくれればいい。
図4 アーランとモリナ
(似顔絵は全くのイメージ)
次に「最繁時」という言葉を覚えて欲しいね。
トラフィックは一番忙しい(交通量の多い)時間帯1時間を対象にするんだね。
高速道路に例えれば、一番渋滞する時間帯(ラッシュアワー)のことを指すんだ。
図5 最繁時とは
<補足>一般企業の「最繁時」は、1日に2回ある。
次は「呼損率」だ。
PBXの場合について、先ほど話したが、図6にそのことを示している。
図では、呼損率1/50(50回かけて1回損する=かからない)を示しているんだ。
図6 呼損率とは
そうすると、呼損率は低いほどいいですが、そうすると外線数が増えてコスト高になりますね。
そういうことだね。
PBXの内線の「平均呼量」がどのくらいか知っているかね? 小野田君。
これも聞きかじりですが、内線あたり5.4HCSとか6HCSと聞いています。
そうだ。 そのことを、図7に示したよ。
図7 PBX内線の呼量
1内線は平均的に「最繁時に6HCSの呼量」ということになる。
どのメーカーのPBXもこの呼量を運べるように設計されていると思っていいんだ。
どうかね?
トラフィックの基本が理解できたかな?
そうだったのか。PBXの内線は全員が電話をしても大丈夫なように設計されているのかと思っていたわ。
はっはっは。そんな状態なら「電話をしても相手は必ず話中」で「相手にかからない状態」になってしまうし、そんな設計をしたら冗長すぎてPBXも高価になってしまうんだよ。
NTTの電話局交換機も同じことだ。
一般家庭の呼量は2HCSくらいなんだがね。
全員が電話をすることもないし、1回あたりの通話時間も習性としての平均値があるんだね。電話を使う人の習性(加入者習性)も勉強すると面白いよ。
その話はまたしてあげるが、O君は今回のトラフィックの話は理解したかね?
はい。よく分かりました。
でも、この応用と言うか、実際に役立てる方法を教えてくれませんか。
いいとも。
では、次回に「トラフィックと外線数の計算法」を教えて上げよう。
ついでに加入者習性の話も、モリナおじさんの話もお願いします。
はっはっは。いいとも。