IPよもやま話
IちゃんとP(パパ)小野田君の会話が続きます。
お父さん、今日は私から質問があるのですが、いいでしょうか。
いいとも、何かな?
実は前回勉強した「NGNの高音質電話機の話」をお客様にしたところ、電話の音質の事で聞かれましたが、答えられなかったのです。
ほう、何かな?
IP電話でも、今までの電話でもいいのですが、「電話の音質を評価する尺度はないのか」ということです。
図1 電話の音声品質
そうか、いままでIP電話の音質が「遅延」や「ゆらぎ」で「エコー」等が発生して悪くなることは勉強したが、音質の尺度の話はしなかったね。
「MOS(モス)値」というのが、ちゃんとあるんだよ。
小野田君はまだいなかったときこの勉強会の第11回で「IP電話の通話品質の話」を勉強したんだ。(読者の方々にはコラムの再読をお願いします。)
その最後に、IP電話事業者にはR値や遅延やトラヒックでクラス分けがA,B,Cと3つあることを勉強したことを思い出して欲しいね。
このことは、第46回の後半でも、再度、勉強したがね。
私、覚えているわ。
名前の知られている大きなIP電話事業者は、クラスAだってことや、クラスCは電話もFAXも通信が良好にはできないってこともちゃんと覚えています。
ほほう、感心、感心!(笑)
では、IPネットワーク構築などで「音声の帯域圧縮」をすることは知っているね。
その音声圧縮と音声品質の関係から話を進めよう。
だめだめ、「音声圧縮」なんて知らないわ。
説明して!
デジタルの音声は64kbpsってことは知っているね。
はい。
それを文字通り、32K、16k、8kと圧縮して、回線(帯域)を有効活用することだが、それを説明していると、今日の本題に入れないが、どうするかね?
本題の理解のために必要なら、音声圧縮の話を先にして欲しいな。ね、小野田君。
ええ、お願いします。
そうか、では、仕方が無い。(笑)
音声圧縮の話をしよう。
デジタルの音声はINSネット64(基本速度インターフェース)に代表される64kbpsだね。
図2 音声の帯域圧縮
これを図2のように、圧縮して多チャネル転送ができるように、するのが「音声の帯域圧縮」なんだ。1本の64kbpsの土管に細い土管を何本も通すことと考えれば分かり易いだろう。
32Kbpsへの圧縮法が「LD-CELP(エルディセルプ)」、8kbpsへの圧縮法が「CS-ACELP(シーエスエーセルプ)」というんだ。
圧縮すると音声品質は劣化しますよね。
その通り圧縮をすると、当然音質の劣化はあるんだ。
その音質の評価基準に「MOS(モス)値=Mean Opinion Score値」というのがあるんだね。それを示したのが、図3なんだ。
この図は、どのように見るの?
図3 音声圧縮と音声品質(MOS値)
先ず、MOSの意味から説明するとね。
MOSとは、音声の評価を主観測定法で行うもので、図3にあるように「5段階」になっているんだ。
それが面白いことに、「世界の標準は0〜4」なんだが、「日本だけ1〜5」になっているその訳が分かるかな?
図4 MOS値は学校の成績
はーいっ!分かったわ。
学校の成績評価と合わせたんでしょ!
はっはっは。そのとおり。
そういうことは早いね。(笑)
それで、図3の見方なんだが、
を示しているんだよ。
そうすると、今、標準的に使われている「8kHz圧縮」は「CS-ACELP(シーエスエーセルプ)」で、MOS値は4.2ということになるんですね。
その通り。小野田君は頭がいいから、結論を急いだが、筋道だって説明するとね、
つまり、圧縮してもMOS値を殆ど下げないで無圧縮に近い技術だ、と言うことになるね。
IP電話の世界では、8K/秒圧縮の「CS-ACELP」が標準として使われているんだ。
因みに参考までに言うと、PHSの世界では「32K/秒圧縮のADPCM」が使われているんだよ。(図5)
図5 IP電話とPHSの音声圧縮
IP電話の世界では、8k圧縮だと分かました。
IP電話の音声品質は、遅延やR値の話しなど難解な部分もありますが、MOS値との関連など、分かり易く説明して戴けませんか?
いいとも。
しかし、今回は時間が来てしまったから、「次回のお楽しみ」にしよう。
分かりました。有難うございます。