ページの本文へ

Hitachi

IちゃんとP(パパ)小野田君の会話が続きます。

イラスト

Iちゃん

パパ、この間はありがとう。
小野田君や質問してきた人に「IP電話のエコーの話」はきちんとできました。
今日は「NGNの話」で、魅力や課題を話してくれるんだったわよね。

Pパパ

そうだったね。

小野田君

お父さん、私から質問してもいいでしょうか?

Pパパ

いいとも。何かな?

小野田君

図1 IP網はFAXが苦手?
イラスト

この間、先輩から「IP電話網ではFAX通信が保証されない」と聞きました。
ネットで調べましたが、各社のIP電話サービスでも「保証していない」とありました。
そこで、「IP電話網でFAX通信が保証されないわけ」を教えていただきたいのです。
そして「NGNはフルIP網」と教わりましたが、NGNになっても「FAX通信は保証されないのか」も教えてください。

Pパパ

そうだね。
前回の「IP電話のエコーの話」を思い出してくれたまえ。
音声やデータの信号がIPパケット化されるときに、「遅延やゆらぎ」が起きて、エコーが発生して音声品質を劣化させる、と勉強したね。

そのことが原因なんだ。
IP電話やFAX通信で、IPパケットがキチンとした間隔で送信されればいいが、ゆらぎやパケットロス(注1)が起きる宿命があるんだね。

レガシーの加入電話網(アナログやISDN)では、この心配はないから「FAX通信は保証」されるんだよ。

小野田君

そうすると、NGNもIP網ですから、基本的には、この問題は同じことになりますね。

Pパパ

そうだ。NGNでも同じことなんだね。
ただ、NGNは、従来のIP電話網よりも「網の遅延時間が極めて短い(数ミリ秒程度)」なので、改善はされるがね。

少し具体的に話そうか。
IP網でのFAXの方式としては、4つあるんだよ。
それは、1.みなし音声方式、2.T.38方式、3.メール方式(T.37)、4.GW-GW方式だ。それを表1に示した。

表1 IP網におけるFAX通信方法

表1 IP網におけるFAX通信方法
方式IP網での利用説明
1みなし音声方式(G.711) GWが音声とFAXの区別をせず、FAXも音声とみなしてデジタル化、パケット化する方式で、4項のGW-GW方式より広い帯域幅が必要だが、音声と同様にFAXデータを扱える。送信側FAXがIP電話網にGWで接続されていて、受信側FAXがNTT電話網に直接接続されている構成であってもFAX通信が「一応」できる。
2T.38方式(注2)× 送信側、受信側ともFAXがT.38ゲートウェイでIP網に接続されていることが前提だが、現実では不可能。
3メール方式(T.37)(注3) × 送受信側がともにT.37を持っていて、どちらもIP網に接続されていれば使えまるが、これも現実では無理。
4GW-GW方式 × 発側のGWが「ピー」(ネゴシエーション信号=ピーヒャララー音)というFAX信号を識別し、着側のGWとの間でFAX通信」を行うもので、発着のGWがその機能を持つ必要がある(専用線的利用)ため。
PBX間でIP網を専用線的に使う場合、GW-GWでFAX通信を行う機能があるGWで実現される。

小野田君

じっくり見ないと理解できないですね。
少し、補足してくれませんか

Pパパ

図2 NGNの負け!
イラスト

FAXは、加入電話網でもIP電話網でも使われるから、そのFAX間で「不特定多数間通信」をしなくてはならないよね。
表1の2.3.4のように相手との条件がつくことは、「通信ができない」ことになるんだ。
冒頭に説明したが、IPの原理が「FAX通信」には不向きなんだ。

小野田君

そうすると、上手く行く場合と、通信不良になる場合があるということですね。

Pパパ

そうそう。
FAXの機種によって、IP網に不向きなもの、つまり、メモリ送信機能を持たないものやメーカーの独自手順やECM機能のないもの、初期の複合機(注4)などが不向きになるね。

ECM(Error Correction Mode)とは、エラーを訂正して再送信する機能のことで、IP化されたパケットにゆらぎやパケットロスがあって通信不良になった場合、その部分を再送できるものだ。
IP網の欠点をカバーする機能だね。

すべてのFAXが一斉にIP網に移行し、一斉にT.38なり、T.37をサポートすればIP時代のFAXということになるんだが、そんなことはありえないよね。

Iちゃん

そうかぁ!
FAXはIP電話網には適さないってことね。
そして、それはNGNになっても基本的には同じことだ、ということね。

Pパパ

おやおや、最後に突然発言してまとめたね。はっはっは。
そういうことだね。

Iちゃん

でも、FAXは、もうNGN時代にはオールドメディアになってしまい、メールとか別の手段で通信すべきって言われているような気がしてきたわ。

Pパパ

図3 名刺にはFAX番号
イラスト

そういうふうに言う人も多いね。
しかし、殆どの人は「名刺にFAX番号」を入れているよね。
無くなりそうで無くならないのが、FAXだとも言えるね。

小野田君

今日の話は良く理解できました。
次回もNGNの面白い話をお願いします。

Pパパ

いいとも。

注1
パケットロス:IPネットワークは、ベストエフォート型とよばれる通信形態が一般。ベストエフォート型通信では、全体の通信が少ないときはネットワークの伝送能力を余すことなく利用できるという利点を持つが、通信量が増加して回線や中継装置、サーバの処理能力を超える場合などに、データ(パケット)を廃棄してもよいことになっている。このデータの廃棄をパケットロスと呼ぶ。
注2
T.38方式:加入電話網で使われるファクシミリ(FAX)の信号をIPのメッセージに翻訳して通信する方法を規定した規格のこと。加入電話網でやりとりされるG3 FAXの信号をT.38で規定したメッセージに翻訳し、IPパケットに載せてやりとりする。
注3
T.37方式:Store and Forward T.37方式のこと。FAX機からのFAXデータのすべてをVoIPゲートウェイやサーバに蓄積して、一括して電子メールの添付ファイルとして送信する。受信した相手方のVoIPゲートウェイ等がFAX信号としてFAX機へ信号を送る。
注4
複合機:コピー、プリンタ、FAX機能を一体化した機種

日立システムズフィールドサービスのサービス・商品に関するお問い合わせ

お電話でのお問い合わせ 0120-152-750 9:00〜17:00(土・日・祝日は除く)

Human*IT