IPよもやま話
IちゃんとP(パパ)の会話が続きます。
パパ、今日は「IP電話のエコーの話の続き」で「エコーの発生理由」「その対策」の話をしてくれる約束だっだわよね。
そうだった、そうだった。
では、なぜIPではエコーが発生するか、つまり、今までの電話よりも音声品質が悪くなるのか、話してあげよう。
前回「IPには遅延の問題がある」と話したね。
もう1つ「IPには“ゆらぎ”」があるんだ。
それを一言でいうとね「IPでは音声が“酔っ払い”になる」ということなんだ。
あらー、パパの「得意種目」ね。(笑)
はっはっは。
なぜ、酔っ払いになるのか、音声がIP(パケット)に切替わるときの問題点を説明すれば分かってくれると思うね。
PBXの出口等に「IPゲートウェイ」を置いて、IPパケット化された信号が出て行くことは知っているね。
そのとき「渋滞」が起きて「遅延が発生する」わけだ。
図1をみればわかるように、ゲートウェイに音声とデータのIPパケットが押し寄せると渋滞になるのだ。
このとき2つの対策をするのさ。
少し難しくなるが
(1)音声の優先制御
(2)データのフラグメンテーション
というやつだ。
図1 遅延(渋滞)の発生
まだ理解できないけれど「音声の優先制御」って、ゲートウェイを通る「データよりも音声を優先させる」のかしら?
そうだ。データは遅延があっても到着側で組み立てればいいが、音声は「リアルタイム通信」だから、遅延があってはいけないから「優先順位を高く設定」するんだね。
そこは分かったわ。高速道路のゲートで、乗用車を優先してくれるようなものね。
でも「データのフラグメンテーション」ってのは、全く分からないわ。
「フラグメンテーション」という言葉の意味から話そう。
「フラグメント」というのは「かけら」とか「破片」という意味なんだ。
「大きなものをかけら(破片)にする」という意味なんだが、つまりは、大きな長さのデータ(パケット)がゲートウェイを通過するのには、時間がかかるよね。
そこで、小さく分割して、その間に音声を通すようにするんだよ。
あー。分かったわ。
それが、併せて「音声優先制御とデータのフラグメンテーション」ってことね。
でも、「ゆらぎ」の説明は出てこなかったわね。
うんうん。これから説明するよ。
音声(乗用車)を優先的に通しても、そのパケットの車間距離を「いつも一定にするのは難しい」よね。
この「車間間隔がバラツクことを“ゆらぎ”」というんだ。
図2のように「酔っ払った音声」(ゆらぎ)が相手に伝わることが、音声品質の劣化に影響するんだよ。
図2 「ゆらぎ」は音声の酔っ払い
そうなんだ。
これで「一見落着」ね。
IP電話の音声品質の劣化は、「遅延とゆらぎ」が犯人ってことも理解できました。
これで、みんなに説明できるわ。
いやいや、もう1つ説明しないとパーフェクトにならないよ。
あら、何が残っているの?
「ゆらぎの対策」さ。
Iちゃん、私が酔っ払って帰ってくると、どんなことになるかな?
そうね。ママから「また、酔っ払って帰ってきたの!」「しっかりしなさい」って叱られるわね。そこで、パパが「はいっ!」ってしっかりするパターンね。
そうだ、その酔っ払いをしっかりさせるしかけを「ゆらぎ吸収」とか「ゆらぎバッファ」とかいって着信側のIPゲートウェイの中に仕組まれているんだよ。
そうかぁ。しっかりものの奥さんが着信側のゲートウェイにいるんだ。ハッハッハ、面白いな。
でも、しっかりさせるため(揺らぎ吸収バッファ)には、少し時間が必要ね。
遅延時間が増えてしまうんじゃないの?
ほほう。最後に冴えたね。
その通りなんだが、多少遅延時間が増えても、揺らぎ吸収した方が、トータルでは音声品質の劣化防止に効果があるんだよ。
冴えたところで、もう1つ質問するわ。
NGNは遅延が数ミリと聞いているけど、同じIPなのになぜ遅延時間が少ないの?
うんうん、冴えているね。(笑)
NGNは、フルIP(エンド−エンドがIP)で、ルーターのホップ数が少ない(「エッジルーター」→「コアルーター」→「エッジルーター」の3つ)ことがその要因なんだ。
パパ、有難う。
これで、みんなに説明できます。
小野田君もここまで明瞭に答えられないかも知れないので、彼にも教えて上げるわ。
この次は、小野田君も連れてくるので、続けていた「NGNの話」をしてください。
原理やネットとの比較など分かったので、具体的な魅力や課題等について話してほしいな。
まだ、実感がないものね。
わかった、そうしよう。