IPよもやま話
IちゃんとP(パパ)の会話が続きます。
パパ、今日は「IP電話のエコーの話」をして欲しいの!
いきなりどうしたんだね。
実は、先日「カラオケボックス」に行ったの。
そのとき「エコーが丁度良くて気持ちよく唄えるわね」って言ったら「そうだ、IP電話ではエコーが問題になるんだってね?」と聞かれたの。
それでどうしたの?
「そうよ。その対策で“IPゲートウェイ”には“エコーキャンセラ”ってものが内蔵されているのよ」って答えたら、「わー、知っているんだ。大したものだね」と誉められたのは良いけれど、「なぜ、エコーが発生するの?」「エコーキャンセラってどんなもの?」と聞かれて、答えられなくて「宿題」にされてしまったの。
小野田君に聞けばいいじゃないか。
こんなこと知らないと思われたくないの!
図1 エコーは?
そうか、わかった、わかった。
「電話のエコー」を体験したら、「会話にならない」ってことを実感するよ。(図1)
では、エコーの発生する理屈から話してあげよう。
(1)カラオケのエコー(反響)は、機械が作る。
(2)今までの固定電話では、2線−4線変換部分(ハイブリッドトランス)でできる。
(3)IP電話は「音声の遅延」でできる。
ということだ。
えーっ!(1)以外は全く理解できないわ。
分かるように説明して!
はっはっは。
では、(2)の説明からしよう。
家庭から電話局に行く電話線は何本か知っているね。
ワンペア(1P=2本)よ。
そうだ。そこに通話の上り下りの音声が通るわけだが、電話機の中で2線を4線(送話器と受話器)に変換する部分があり、ここで「回り込み」が発生するし、電話回線でも2線を4線に変換する部分がある。ここでも「回り込み」が発生するんだ。
これを図2に示すよ。
図2 固定電話(回線交換)のエコーの発生原理
あら、固定電話でも遅延があるの?
勿論あるんだよ。
でも、沖縄から札幌の遠距離通話でも、最大28msだから通話には支障がないんだよ。
じゃあ、IP電話はどうして「遅延」が大きくて、「エコー」が発生するの?
そこなんだ。
(3)のIP電話のエコーは「遅延」と「ゆらぎ」が原因で起こるんだが、その遅延時間が音質の悪さに比例するといってもいいのだよ。
遅延時間と音声品質の関係を知っているかい?
いいえ、知らないわ。
遅延が大きいとエコーが発生して「明瞭な音声通話」ができなくなるんだ。
その遅延時間は、小さいほどいいが、IPでは「音声のパケット化」や「揺らぎの吸収」などで遅延を抑えるのが大変なんだね。
遅延は、150ms〜200ms位までは良好な音声通話ができるが、それ以上ではエコーなどが発生して明瞭な通話はできなくなるんだよ。
この遅延時間と通話の品質(可聴度)を、固定電話網の判断基準のdB(デシベル)と比較したのが、図3だ。
いま、NTTの固定電話では平均16〜17dBで通話しているが、とても明瞭だろう。
えー。今の電話で「音質が悪い」などと感じたことは無いわ。
それに匹敵するのが100〜150ms程度だということだ。
図3 遅延時間と通話品質の関係
出典:電話技術完全ガイド(藤島 信一郎著/リックテレコム)
この遅延時間に関連して「IP電話会社のランク分け」については知っているね。
えーっ、IP電話会社にクラス分けがあるのー?
何を言っているんだ。もう随分前(第11回)になるが、勉強したじゃないか。
仕方がない。もう1回おさらいするよ。
表1のように3つに分けられるんだよ。そこで、IP電話会社は総務省にキチンとデータ(R値という)を提出して、クラスの指定を受けるんだ。
アーアー、思い出したけど、すると「IP電話に加入するときは、電話会社のクラスを確認」しないと駄目なのかしら?
いやいや「光IP電話(AB〜J)」や「ADSLのIP電話(050)」は、クラスAまたはBなので、エコーの心配も実用上ないから通話は大丈夫だよ。
そうなんだ。
表1 IP電話事業者のクラス分け
規定項目 | クラスA (固定電話並み) |
クラスB (携帯電話並み) |
クラスC |
---|---|---|---|
総合伝送品質率(R) | >80 | >70 | >50 |
エンド−エンド遅延 | <100ms | <150ms | <400ms |
呼損率(接続品質) | ≦0.15 | ≦0.15 | ≦0.15 |
<補足>
1.固定電話・携帯電話並みというのは、通話品質のみに着目したもので、機能その他については、無関係である。
IP電話の音声品質を悪化させる「エコー」が「遅延」で発生し、「遅延」が大きなキーワードだってことは分かったわ。
でも、なぜ、遅延が起きて、どのような対策がされているのかは、ちっとも分からないわ。
「遅延」や「ゆらぎ」とやらが、どうして発生してどのように対策するのか、分かり易く教えて欲しいな。
うんうん。でも、今日は時間がきてしまったので、その話は次回にしよう。
早く教えて欲しいわ。
私の宿題なんだから!
わかった。わかった。