IPよもやま話
IちゃんとPパパの会話が続きます。
今日は前回話が出来なかった「NGNとインターネット」の話をしようと思う。
インターネットとNGNって競合するのかしら。
そうだね。競合する部分もあるんだ。(図1)
しかし、インターネットとNGNのコンセプトの最大の違いは「NGNが加入電話網」だと言う点だね。
最初に勉強したように「NGNは新IP加入電話網」として位置付けて、いいからだね。
図1 NGNとネットは競合する?
前回は私の質問で肝心の話ができなくてすみませんでした。
NGNとネットの比較を、表形式で比較したものがありますか?
うんうん。作っておいたよ。(表1)
よく見てくれ給え。
表は、後でゆっくり見るけど、NGNが決定的にネットに勝つ点を教えてくれないかな。
しかたない子だね。
最近の若い子は「結論を急ぐ」ね。(笑)
いいとも、いくつか教えよう。
図2をみてくれ。
NGNがネットに勝つことは、4つある。
表1 NGNとインターネットの比較
NGN | 判定 | 比較項目 | 判定 | 従来のインターネット |
---|---|---|---|---|
通信事業者(NTTなどのビッグキャリア) | - | ネットワーク管理者 | - | プロバイダで多数(総合責任者はいない) |
高品質(通信速度や安定性などの品質保証が可能=新加入電話網が目標) | ◎ | 通話品質 | × | ベストエフォート型の最たるもので「不安定」 |
低い(サービス提供事業者は、キャリアとの契約に従ってNGNを利用するので) | △ | サービス提供の自由度 | ◎ | 高い(これが大きな特長であるが、そのためにいろいろな犯罪も発生しやすい) |
高い(利用者は全てネットワーク接続時に個別認証される) | ◎ | セキュリティ(不正利用やウィルス面) | × | 低い(高い自由度の反面、匿名性が高く、不正アクセスやなりすまし、ウィルス攻撃等が容易) |
1台のパソコンをADSL、無線、FTTHなどに、シームレスに接続可能 | ◎ | マルチアクセス | × | 個別にネットワーク接続が必要 |
キャリアが提供するプラットフォームの利用が可能(認証は確実) | ◎ | 課金・認証・決済等の機能 | ◎ | 利用者が自由に設定できる |
大きい(キャリアがサービスプラットフォームを独占することから、囲い込みにつながりやすいといわれている=今問題化) | △ | サービス提供事業者に対するキャリアの影響力 | ◎ | 低い |
インターネットより割高になることが予想される | △ | 利用料金 | ◎ | 安価に利用できる |
不稼働率が、20年に1時間のレベルに2008年の目標(NTT) | ◎ | NWの信頼度 | △ | ベストエフォート型で不安定 |
◎ | 網機能の開放 | × | データを送受信するだけ | |
本来が加入電話網(光&IP)を目指している。(固定・移動電話&FAX可能) | ◎ | 加入電話網機能(端末収容) | △ | インターネット電話・インターネットFAXが利用できるが、機性は不充分 |
図2 NGNがインターネットに勝てること
少し話が難しくなるが、ついてくるかい?
はい。一生懸命聞きます。Iちゃんも真面目に聞こうね。
いいわ。
では、図2について説明するよ。
まず、(1)の品質保証だが、10メガ級の高帯域を安定利用できるんだが、少ないホップ数で「網内遅延」を防ぐんだ。
これで「品質保証を活用するサービスが可能」になるね。網内遅延は「数ミリ」程度なんだよ。インターネットは良くても30〜150ミリ程度だから如何に遅延が少ないか分かるだろう。
ホップ数って何?
ルーターの中継段数とでもいったらいいかな。
NGNは端末−エッジルーター−コアルーターエッジルーターと3つのホップと少ないが、インターネットはいくつものホップを経て接続されるので遅延が大きくなるんだよ。
遅延は、他の網と比較するとどのくらいですか。
加入電話網は、札幌−沖縄間で28ms程度。IP電話網は30〜150ms程度だね。
(2)の「セキュリティ」はね。
「回線認証」機能があるのでVPN接続が手軽になり、他の認証との連携で確度が向上することが特徴だ。
通信制御サーバーが回線ごとの発信者番号や発IPアドレスなどをチェックする(基本)し、VPNの構築が、いままで中小企業ではコスト的に難しかったが、今後はNGNで可能になるね。
また、異なる企業間のビデオ会議に活用できるようになるし、シン・クライアント(注1)の認証と使い勝手を向上できるんだ。
小野田君、理解できる?
私には少し難しいわ。
後で、よく教えてね。
いいとも。
お父さん、(3)はどういう意味ですか?
ユーザーのアプリケーションから網を操作できるんだよ。これはネットでは無い機能だ。このためにインターフェースが公開(通信事業者が他のベンダーが利用できるように2つのインターフェースを公開)され、利用が広がる可能性があるんだよ。
その1つは「アプリケーションサーバーとNGNを接続するANI(国内ではSNI(Application Server Network Interface)と呼ばれることもあり、SNIはNTTが独自につけた名称)(注2)、もう1つは、「NGNとエンドユーザーの端末を接続するUNI(注3)
(4)は何となく分かりますが、具体的に教えてください。
日本の加入電話網は世界一の信頼度(=20年に1時間しかダウンしないレベル)を持っているが、NGNもこれに近づくようにがんばっているんだよ。
通信回線や機能を冗長化し、トラブルが発生した際には瞬時に切替できる。
入り口のエッジサーバーにはシスコの二重化構成を採った信頼度の高いものを使うんだ。
ただ、加入電話の交換機のような呼制御のフェーズ1、フェーズ2(注4)のような処理はないがね。
また、災害時に電話が集中した場合にトラフィックを制御して輻輳(ふくそう)を未然に防止し、ネットワーク機能を確保するようにもなっているんだよ。
図3 将来SaaSもNGNで
NGNが、信頼度に優れた「新IP加入電話網」であることが分かりました。
SaaS(注5)のようにインターネット利用のシステム(注6)が普及していますが、ネットの代わりにNGNを使った方がいいんじゃないですか?
ほほう。小野田君も凄いことが言えるようになったね。そうなんだよ。近い将来その方向もでてくるだろうね。
今日の話は少し難しかったですが、よく復習してみます。
次回は、また、教えてほしいテーマを持って伺いますのでよろしくお願いします。
いいとも。