IPよもやま話
I(愛)ちゃんとP(パパ)とO(小野田君)の会話が続きます。
今日は「空飛ぶ車の話」だったわよね。
小野田君が調べてきてくれたのよね。面白そうね。
はい、いよいよ車が空を飛ぶ時代になってきましたね。
愛ちゃんは、「空飛ぶ車」と言ったらどんなイメージを持ちますか?
そうねえ、大型のドローンにエンジンをつけたようなものかな?
勘がいいですね。そういうタイプもあります。そもそも「空飛ぶ車」とはどんなものかから説明します。厳密な定義はないのですが、一般的に「電動かつ自動で垂直に離着陸する移動手段」といったところかな。1つには、愛ちゃんの言った「無人で遠隔操作や自動制御によって飛行できる航空機(ドローン)を乗車可能にしたもの」があるし、2つには、「EV(電気自動車)ベースにプロペラや自動制御システムを備えたもの」などがあるんです。
別の分類の仕方では、
といった3つのタイプに分けることができます。
定義が無いって、地上も走れて空も飛べればいいってこと?
乱暴にいえば、地上を走ることが条件にはなっていませんが、車は地上を走るものだから、まあそういうことになりますね。
海外では「Skycar(スカイカー)」「Aircar(エアカー)」「Urban Air Mobility(アーバン・エア・モビリティ)」「Personal Air Vehicle(パーソナル・エア・ビークル)」「Flying cars(フライング・カーズ)」などと呼ぶことが多いようです。
3つのタイプに分類されたけど、私の思いついた「ドローンタイプ」って、多いのかな?
はい、その通りです。いま、一番多いのがドローンをそのまま大きくして乗車可能にしたタイプなんです。仕組みも基本的にはドローンと同じで、電動で遠隔操作や移動制御、またはジョイスティックなどで簡単に操作ができるものが多いようです。
プロペラで空を飛ばすのは、車の重さ(人間も含めて)から考えて、プロペラがいくつもいるでしょうね。
そうですね。ボディの軽量化が必要だし、バランスを取りながら揚力を上げるために、プロペラは最低4基以上付いています。図1と図2は一例です。
図1 空飛ぶ車の例①
図2 空飛ぶ車の例②
ところで、パパ。空飛ぶ車が実現したら、どんな「良いこと」があるの?
そうだね。今考えられるメリット(できること)は5つくらいあるね。
でも、無秩序に空を飛び始めたら事故も起きるだろうし、「法規制」はどうなっているの?
うん、いい質問だ。
空を飛ぶんだから「飛行機」になるのかな?
そうですね。日本の法律に「航空法」というのがありますが、「空飛ぶ車」が「航空機にあたるか?」が問題になりますね。航空法でいう「航空機」とは、「人が乗って航空の用に供することができる」となっているんです。「人が乗る」とは、国土交通省によると「機体に人が座って操作する離着陸装置を装備したもの」とされています。
そうすると、人が座って乗ることができ「離着陸装置のある空飛ぶ車」は、航空機としての法規制を受けることになるのかな?
はい、その可能性はあると思います。
ちょっと待って!ドローンタイプなら操縦者は乗らないんじゃない?
ほほう、鋭いですね。ドローンタクシーというのがあってね、これは操縦者が乗らないんです。このタイプはね、既に航空法で規定されているんです。つまり、航空法では、操縦者が乗りこまないで、飛行することができる装置を有する航空機は、「無操縦者航空機」として国土交通省大臣の許可を得れば、飛行が認められているんですね。
エーッ、本当?じゃあ、現行法規で認められるってことですか?
いやいや、そうはいきません。「航空機」や「無人航空機」と云うことになった場合、いろいろ問題があるんです。法規の「航空機」に当たる場合は、安全性の検査や耐空証明などの沢山の非常に細かいルールを守る必要があるし、無人航空機には、航空できる時間や区域などに、厳密な制限があってね、事前に飛ぶルートを国土交通省に届けなくてはいけないんです。操縦者にも、特別な免許が必要になるでしょうしね。
えー、じゃあ「渋滞だから飛び上がって自由に空を飛ぶ」なんてことはできないじゃないの!
そうですね、いろいろ考えると「空飛ぶ自動車の実用化」と「現行法規との関連」の問題は、高いハードルがあると言っていいですね。実用化とともに法改正も大きな問題で注目していく必要があります。
空飛ぶ車は、ドローンのように操縦者不在で空を飛ぶ場合は、自動運転や遠隔制御の技術がしっかりしていないと駄目ですね。前に勉強した携帯電話の5G(とか6G)にも関連してきますね。
待って待って!でも、さっきの話、聞き逃しちゃったけど「空飛ぶドローンタクシー」って、もうあるんでしょ?
いやいや、空飛ぶタクシーは、アメリカのウーバー社が2023年に実用化を目指しているもので、まだかもしれません。海外での実用化(販売)は、2019年あたりから始まっているようですが、調べた範囲では確認できていません。
なーんだ。ビックリした。
世界と日本の進捗状況(プロジェクトなど)を整理したのが表1です。
表1 世界の「空飛ぶ車」の実用化状況
出典・引用:自動運転ラボ(2018年10月1日)と日経Xtrendの情報、日本経済新聞電版
(2020年1月16日)を元にBIGLOBEニュースを加筆して藤島が表にした。
ということは、「空飛ぶ車」は、間もなく実用化され、我が国にも早晩登場してくるということですよね。楽しみです。
海外も今は普及前で「法整備」が課題だね。空飛ぶクルマが飛行機の枠組みから新たな枠組みに分類されて、自家用車やタクシーのように街中を低空で飛び回る時代はいつ到来するのか。今後数年間は目が離せない状況が続くことになるね。
そうそう、面白いニュースがある。(*1)
「空飛ぶ車の国際コンテスト」で日本が100万ドルの賞金を獲得しそうだという話だ。
えーっ、日本も頑張ってるのね。もっと教えて!
日本のチームが「空飛ぶクルマ」と呼ばれる1人乗りの小型航空機の開発コンテスト「GoFly(ゴーフライ)」で大きな賞を獲得したそうだ。米ボーイングが主スポンサーを務める同コンテストで、日本のチーム「teTra(テトラ)=日本の学生と社会人の有志チーム」が実質グランプリ(大賞)となる「ディスラプター賞」(ディスラプターは「創造的破壊者」の意)を受賞して、賞金10万ドル(約1080万円)を獲得したんだね。(*2)
更に、NHKテレビの新しいニュースで(*3)、スカイドライブ社が2020年3月25日(水)に世界初披露の機体「有人機SD-03」で、公開飛行試験を成功したと報じられたね。同社では、2025年の万博に出品し、2023年には実用化して、2028年には自動運転化も実現したいと言っているんだよ。
そうか、日本も頑張って欲しいわね。今回は面白かったわ。
私のお隣のお婆ちゃんとおじいちゃんは、もう70才代で、お孫さんのところに行くのに2時間近くかかって大変らしいの。空飛ぶタクシーで行ければ、早いし楽だし「嬉しい」って言うでしょうね。