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I(愛)ちゃんとP(パパ)とO(小野田君)の会話が続きます。

イラスト

Iちゃん

今日は「鉄道の自動運転の話」でしたね。
JRが電車の自動運転の実験をしたって新聞で読んだけど、車の自動運転は、どんどん進化しているようだけど、鉄道(電車)の自動運転て、あまり話題になっていないわよね?

小野田君

そんなことはないと思いますよ。
現に私たちが利用しているものがあるじゃないですか!

Iちゃん

えっ、そう?

小野田君

はい、無人自動運転は難しい技術のように思えますが、鉄道の世界では古くから実用化されていますよね。本格的に導入して営業運転を行っている鉄道路線(運転操作を行わない乗務員が乗る場合を含む)には、2018年8月現在のデータですが、次のようなものがありますね。

① 日暮里・舎人ライナー(東京都)
② ゆりかもめ(東京都)
③ ディズニーリゾートライン(千葉県)
④ シーサイドライン(神奈川県)
⑤ 愛知高速交通東部丘陵線(愛知県)
⑥ 大阪市高速電気軌道南港ポートタウン線(大阪府)
⑦ 六甲ライナー(兵庫県)
⑧ ポートライナー(兵庫県)
⑨ 札幌市営地下鉄の一部(北海道)
⑩ 舞浜リゾートラインディズニーリゾートライン(千葉県)

Iちゃん

えーっ、小野田君物知りだねー!

小野田君

いやいや、ちょっと予習してきたんです。

Pパパ

付け加えるとね、東京地下鉄(東京メトロ)や仙台市地下鉄、都営地下鉄、横浜市営地下鉄など、多くの地下鉄で運転士乗務のもとATOによる運転が採用されているんだ。

Iちゃん

ちょっと待って!そのATOって何?

Pパパ

図1 自動運転ランク
図1 自動運転ランク

いやいや、すまんすまん。
いきなり事例の話になったが、鉄道の運転レベルには、自動車の自動運転と同じように「GoA」というランクがあって、「GoAo〜4」と5段階があるんだ。
それを、まとめて表1に整理しました。
ATOについては、後で説明するね。

 
 

表1 鉄道の自動化の段階によるレベル分け
表1 鉄道の自動化の段階によるレベル分け
(*)まだ導入している路線は少ないが、日本国内ではゆりかもめや神戸新交通などの新交通システムがレベル4を達成している。

出典:自動運転LAB(2019年7月1日)

Iちゃん

そうなんだ。
ところで、今日のテーマを思いついたのは、新聞記事だったけど、JRの「電車の自動運転」は、どこまで進んでいるの?

Pパパ

JRはね、2019年の10月8日に「自動列車運転装置(ATO)」(*1)の導入を発表したんだ。

小野田君

ATOは、冒頭に出てきた「地下鉄」や「新交通システム(ゆりかもめ)」などに使われていますよね。それと同じですか?

Pパパ

そうだね、JRは2020年度末が導入予定なんだが、常磐線(各駅停車)の綾瀬〜取手間でATOを導入するのだそうだ。

Pパパ

図2 JRの列車自動運転計画
図2 JRの列車自動運転計画

JRは、山手線で運行しているE235系電車で自動列車運転装置(ATO)の試験を2018年12月と2019年1月に実施したんだ。

ATOはね、「Automatic Train Operation」の略で、列車の運転を自動化するシステムだ。運転士がスイッチを入れるだけで、列車の加速、惰行、ブレーキ、停止といった一連の操作が自動で行なわれる。
現在は、東京地下鉄(東京メトロ)や札幌市交通局などの地下鉄路線や新交通システムに導入されており、無人運転方式と運転士が乗務する方式があるんだね。

Iちゃん

少し進歩したの?

Pパパ

そうだ。これまでのATOは、遅延や徐行といった運行上の条件を考慮せずに一定の走行パターンを生成するものだったんだが、JR東日本が開発しているATOは、地上の運行管理装置と連携させることで、運行条件に応じた走行パターンを生成することが可能となっているんだよ。

小野田君

具体的になどんな試験になったんですか?

Pパパ

山手線の試験では、乗り心地の確認や想定される走行パターンを用いての試験、運転台前方に運転士が走行中に必要な情報を直接投影する「ヘッドアップディスプレイ」の視認性試験が行なわれたんだ。試験日は2018年12月29、30日、2019年1月5、6日で、いずれも終電後に全線で実施されたんだね。

小野田君

JR東日本は、ATOの導入により「ドライバレス運転」(ドライバーレス運転)を実現し、今後も「最新技術を活用して仕事の機械化・システム化を進める」としているそうですね。

Pパパ

そうだ。JRの各社は相次いで試験を始めているんだ。
それらを整理したのが表2だ。今後はATOの開発を進め、運転士不要のドライバーレス運転の実現を目指すそうだ。

表2 JR各社の列車自動運転試験状況
表2 JR各社の列車自動運転試験状況
出典:ITmediaNEWS(2020. 2. 1)を元に藤島作成(一部加筆)

Iちゃん

試験だけなの、今は?

Pパパ

いやいや、JRは常磐線で2020年度末に導入する計画があるんだよ。

Iちゃん

それって、具体的にはどんな内容?

Pパパ

運転士はいるんだが、ボタンを押すだけで発車と走行、停止が可能になるんだね。
将来的には運転手の資格が無い乗務員でも運転ができることを目指すんだそうだ。

Iちゃん

そうか、運転士はいるんだ。

Pパパ

うん、現在はね。今後ATOの開発を進め、運転士不要のドライバーレス運転の実現を目指すそうだ。

小野田君

JRは、なぜ常磐線にしたんでしょうか?

Pパパ

常磐線は、既にATOを導入している東京メトロ千代田線と直通運転しているからなんだ。
この常磐線のATOの導入後の収穫(知見)を山手線のドライバーレス運転の検討に反映させる方針なんだそうだ。

小野田君

何か課題はありますかね?

Pパパ

そうだね。
冒頭に紹介した事例では、高架で、駅にはホームドアがあるなど線路内に容易に立ち入ることができない構造が多いが、踏切のある一般的な路線では、安全面に課題があるよね。鉄道で問題になるのは、車両の不具合や線路内への立ち入りなど突発的なトラブルだし、万が一脱線塔等大きな事故になると、多数の死者が出るなどの危険があるということだ。
過去には1993年に大阪市の「ニュートラム」が終着駅の住之江公園駅のホームをオーバーランして車止めに衝突して、200人以上が負傷する事故が発生したし、2019年6月には、横浜市の「金沢シーサイドライン」の新杉田駅で自動運転の車両が逆走し車止めに衝突して17人が重軽傷を負った、という事故もあったんだ。

Pパパ

前の方で「ATO」の話をしたが、もう一つ紹介すると、最近話題の技術を用いるCBTC(無線式列車制御、コミュニケーション・ベースド・コントロール)システムというのがあるんだ。
今までよりきめ細かい制御が可能になるもので、個々の列車に情報通信制御装置を積んで、集中制御室で位置を確認することで効率を高められるんだね。そして、それにもう一つ追加したい話がある。前に勉強した携帯電話の5Gに関連するんだが、鉄道でも、保安設備用、列車制御用、旅客サービス用等の今後の無線方式のあり方が問われていて、5Gの開発概念の中に鉄道も含まれるという考え方もあって、今後の課題になっているようだね。

Iちゃん

でもJRが、そうしたことを乗り越えて、列車の無人運転を目指すのにはどんな狙いというか効果とか目的があるの?

Pパパ

うーん、今世の中は「人手不足」が叫ばれているが、それは鉄道各社も同じでね。
国交省鉄道年報によると、JR7社の運転手など現場の社員数は、2008年度には9万人強だったが、2016年には8万5千人程度に減少したんだ。そしてさらに55歳以上の高齢者が多く、今後は大量退職になり、人手不足は深刻化するんだね。

小野田君

そうすると、国としても何か施策が要りますね。

Pパパ

うん、うん、そこで国交省は、自動運転の技術を向上させて実用が可能になれば、これまで採算をとるのが難しかった過疎地域の列車の本数を増やしたり、廃線になるのを免れたり、新たな路線敷設まで期待できると思っているんだね。
会社でこんな話をしたら、私の部下が、郷里に両親が健在なんだが、過疎化が進んでローカル線の廃止が話題になっているそうで、この電車の自動運転で、父母の為にも運転継続になるといいな。と言っていたよ。

Iちゃん

そうかぁ。列車の自動運転もこれから大切なテーマになるのね。

*1
ATO:Automatic Train Operationの略)とは、列車の運転を自動化する運転保安システムである。現在では主に、人に対する安全性が確保しやすい地下鉄や新交通システムに使われている。

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