IPよもやま話
I(愛)ちゃんとP(パパ)とO(小野田君)の会話が続きます。
今日は小野田君が勉強してきた「自営モバイル網の話」で、前回の「自営BWA」の続きで「sXGP方式の話」をしてくれるのよね。
図1 自営モバイル網
そうです。
冒頭からおさらいですが、5G、ローカル5Gを勉強して前回は「自営モバイル網」の中の「自営BWA」について勉強しました。
愛ちゃん、何を覚えていますか?
はい。
その中で、ローカル5GやプライベートLTE(sXGP方式、自営BWA)のような「モバイル自営網」が総務省の法制度化によって、通信事業者ではないシステムインテグレーター(SI事業者)でも構築ができるようになったことですね。
それだけ?ですか。
小野田君が勉強に行った日立システムズネットワークス(現:日立システムズフィールドサービス)(以下:(HISYS-FS))が、日立システムズ(以下:(HISYS))と連携して、(HISYS)社内の「5Gの次世代無線通信実験局」を開設して、自営モバイル網のビジネス展開を積極的に進めて行こうとしていることね。
それだけ?ですか?
しつこいわね。あと3つ覚えたわ。
@ 自営BWA(プライベートLTE)とはモバイルキャリアの設備を利用せず自営の設備で自社/個人専用のLTEネットワークを構築する仕組みです。実用的な「自営5G網」が構築できること。
A プライベートLTEは、Wi-Fiの「通信料が発生しない」というメリットを包含しつつ、認証にSIMを用いることで高セキュリティを、さらに公衆ネットワークを経由せず専用で利用できることから高速、高信頼、低遅延を担保できること。
B これからの普及が期待されること。
素晴らしい。完璧です。
では、今日は「sXGP方式」です。
「sXGP方式」は自営通信用向けの規格です。2020年に実施が予定されている事業所コードレスで使われている「自営PHS」の後継として開発されたLTEベースの自営無線システムで、2017年に1.9GHz帯のデジタルコードレス用帯域での利用が認められています。sXGP方式の運用帯域の拡張も行われます。
それは、2021年1月で、音声サービスが終了する公衆PHSの周波数帯を活用して行われるんですね。
sXGPという名前は“shared XGP”から来ています。
その“shared XGP”がわからないわ!
ごめんごめん。
XGP(extended global platform)は現行PHSのメリットをそのまま引き継ぎながら、さまざまな高速化技術を盛り込んだ移動体通信サービスの規格で、英語の“shared”は共生とか共用という意味ですが、対応するBandはband39(*1)で、通常、他のLTE帯域ではLTE専用帯域として割当られていることが多いんですが、この帯域は公衆PHS(2021年1月一般サービス終了(*2)、2023年3月テレメタリングサービス終了)およびDECT(*3)が使用しており、帯域を共有して使用することから"shared EX-tended Global Platform方式と命名されているんですね。
簡単に言うとsXGP方式は、1.9GHzの周波数帯を使用する自営通信用のTD-LTE(*4)規格です。無線免許の申請や無線従事者の設置が不要なため、手続きの面で言えば、プライベートLTEの利用を始める際の障壁は低いんです。
用語の意味は分かったわ。
図3 PHSPBX更新可能
一口で説明すると「iPhoneなどのLTEスマホをそのまま子機として利用できる“日本発”のコードレス電話規格が「sXGP方式」です。
PHSを内線に使うPBXは、一世を風靡して全国に子機ベースで400万台普及した(現在は約300万台)とも言われています。でも、PHSの公衆サービスは終了したし、子機の生産もできなくなっているので、この子機をiPhone等に置き換えることができる「sXGP方式」は、既設ユーザーにも通信系ディーラーにも有難い規格と言っていいですね。
そうそう、PHSは、出力が低くほとんど他の機器への影響がないということで病院などで良く使われてきたわよね。
図3 コードレス電話システムの高機能化(オフィス内)
(※)UL比率、多値変調、バンド幅、アンテナ特性向上など組み合わせた上限見込み値。
図3〜図5の出典:総務省XGP Forum資料(2019年5月30日)を元に作図
sXGP方式は、高セキュリティ(Wi-Fi対比)や公衆網の輻輳その他による影響を受け難い特性があるので、これを活かして、「病院、交通機関、電気/ガス/水道などのインフラ業種などの需要(利用)が見込まれます。
具体的な利用例として、オフィスのデジタルコードレス電話と病院の利用シーン、そして工場・発電所などの監視システムの高度化を図3、図4、図5に示しました。
そして、将来の更なる高速化の需要に対しては、他のプライベートLTE/5Gとの組合わせなど検討されるようです。
内線PHSのPBXが、スマホに置き換えられるってのは魅力的よね。
でも、今までのPHSの機能を完全に引き継げるのかしら?
いや、それがsXGP方式は、TD-LTEの規格をできるだけそのまま利用するために、これまでのPHSでは可能だったこと、たとえば、端末同士が直接通信して音声通話を行う「トランシーバーモード」などの一部の機能が省かれるものの、LTEの技術や製品を使ってこれまで構内PHSでできていたことの多くをカバーして、かつ、IoTなど新しい分野での応用も視野にいれた規格となっているんです。
PHSがすでに国内でも古い規格となったし、また海外でもほとんど利用されなくなったために、製品や技術を開発するのも難しくなりつつあるよね。LTE技術を、最新世代のPHSに組み込むことで、周波数利用効率を向上させ、また、将来のコンポーネントといった部品調達、技術の転用、さらにエコシステムの共有を行うことで、息の長い自営方式無線規格とできることが、このsXGP方式が標準化、製品化された場合の大きなメリットと言えると思うね。
sXGP方式のメリットは、図6のように2つあるね。
@は説明されたね。Aは、現行のsXGP方式は5MHz幅の運用帯域を用いて下り最大12Mbps、上り最大4Mbpsのスループットを実現しているが、帯域幅拡大に伴い増速が見込まれ使い勝手がさらに向上するんだよ。
図6 sXGPの普及促進理由
そのsXGP方式の運用帯域の拡張は、2021年1月に音声サービスが終了する公衆PHSの周波数帯を活用して行われるんですが、そのことがsXGP方式の普及を促進することになるんですね。(図6)
次回のテーマだけど、5G、ローカル5Gと勉強してきたけど「6G」ていうキーワードを何かでみたんだけど、5Gが始まったばかりで「6G」なんて話があるんですか?パパ教えて!
いいだろう。2回も小野田君が頑張ったから、次回は私がやろう。