IPよもやま話
I(愛)ちゃんとP(パパ)とO(小野田君)の会話が続きます。
今日は「さよならポケベル」の話で、小野田君が担当してくれるのよね。
はい、そうです。
いろいろ調べて来ました。愛ちゃん、どんどん質問して下さい。
自信満々ね。小野田君は使ったことも無いのに。
「ポケベル」って一体何なの?
ポケベルって、正式には「ポケットベル」の略です。
文字通り「ポケット(携帯できる)のベル(着信装置)」のことです。
簡単に言うと、「電話の着信ベルだけを小型の携帯端末に送る仕組み」なんです。
携帯電話と違う点を教えて下さい。
そうですね。
携帯電話と比較すると、「通話が出来ない」だけでなく全く違うんです。
ポケベルは、センターからメッセージ(文字)を送る機能しかありません。通常、ポケベルはメッセージを受信するとブザーが鳴ったりして知らせ、ユーザは、画面で文字を読めます。言ってみれば、「携帯メールの返事ができない版」みたいなものです。しかも表示されるのは「数字」だけなんです。
決定的に違うのは、携帯電話は事業者の設備が「どこにその携帯電話がいるか」を探して、その電話と通話しますが、ポケベルには「相手を探すしくみ」はなく、無線で放送しているんです。それが自分宛の放送であれば、自分のポケベルが鳴る(着信する)という仕掛けなんです。
へー。じゃあ、携帯電話よりもラジオに近いのね。
そうですね。
ポケベルには、無線を受信するだけで送信をしないので、病院など携帯電話使用禁止の場所でも使える点も違いの1つですね。
ポケベルに着信しても「通話」ができないなら、どんな使い方をするの?
ポケベルには、センターからメッセージ(文字)を送る機能しかないので、着信があるとブザーが鳴ったりして知らせます。ユーザーは「画面で文字を読む」ことになります。例えるなら「返事のできない携帯メール」ですね。
ポケベルに送信するには、一般の電話機から、プッシュホンで文字を送ります。電話機には数字ボタンしかありませんから、1文字につき2桁くらいの数字が決まっていて、その数字でメッセージを送ります。もちろん画面に文字は表示されませんから、ひたすら間違えないよう数字を打ち込むだけです。
きゃー、面倒!
そう面倒なので、この変換をしてくれる機能がポケベルに付いてます。ただし、あくまで変換をしてくれるだけで、送信機能はありません(*1)から、できたコードを一般の電話機から送信する必要があります。
そうなんだ。
どんな仕組みになってるんですか?
仕組みを簡単な図で説明すると、図1のようになります。
図1 ポケベルのしくみ
図だと、私が読んだ人のポケベルに数字が表示されるのよね。
例えば、どんな数字で、何が分るの?
いい質問です。表1に示したようなものです。
表1 数字と伝えたい意味
当時の若者は真剣にこれらの数字を、一所懸命に固定電話や公衆電話から打ち込んでいたんだそうです。
いやいや若者だけではなく、われわれサラリーマンも仕事で出先の人間を探したりするのに重宝したものです。
女子高生などは、「ルーズソックス」「プリクラ」と「ポケベル」を「三種の神器」と言っているくらいだったんだよ。
質問の順序を間違えたわ。
肝心のことだけど「ポケベルとさよならするのはいつ」なんですか?
そうですね。
現在国内でポケットベルを使った無線呼び出しサービスを唯一展開しているのが「東京テレメッセージ」ですが、今年(2019年)9月末にサービスを停止すると発表したんです。
そうそう補足ですが、その他の事業者もサービス提供していたんですが、撤退する事業者が相次いで、2007年には全国でサービス提供していたNTTドコモが携帯電話の普及に押されて、サービスを終了していたんですね。
そうなんだ。
私は使ったことが無いんだけど、一時は普及したの?
そうです。
最盛期を迎えたのは1996年(平成8年)のことで、契約者数は1000万件を突破しました。互いに「ベル友」と呼び合って連絡を取るコミュニケーションも社会現象となり、たびたびドラマや漫画でも登場していたほどです。
じゃあ、いまのスマホのような主役だったのね。
大体話は理解できたけど、「ポケベルが無くなる」という話でおわり?
図2 サービス終了
いいえ。
ポケベルは姿を変えて生き残るというか、発展的解消と言えるようになります。
えっ、どういうこと?
ポケベルが再び脚光を浴びてね。“電波”の特性をいかし「防災ラジオ」として防災に活用されているんです。
図3 防災ラジオのラインナップ
正式には「280MHzデジタル同報無線」といいます。
東京テレメッセージ社のホームページに載っていますが、図3のようなものです。
どんな働きをするの?
災害のときの情報はとても大事ですよね。自治体から住民への情報が、この東京テレメッセージの中央配信局経由で配信されるのですが、「耐災害性」に優れているので、高信頼度です。
固定電話や携帯電話のように、災害時に輻輳などによって通信ができなくなるようなことはないの?
280MHzデジタル無線システムは、自治体や国家機関のための非常時通信システムで、ユーザー数も少ないこともあり、通信制限や輻輳はないのです。
停電時でも情報配信拠点、中央配信局、送信局の停電対策を講じています。戸別受信機は停電時にも単三電池で駆動できるようになっているので安心なんです。
そうすると、自治体がこのシステムを採用すれば、住民は「防災ラジオ」で災害時の情報を確実に把握できるようになれるってことね。
もう、どの程度普及しているの?
販売数は既に約15万台だそうで、これは「防災無線とラジオ放送」のどちらも聴くことができるんですね。防災情報は文字と音声、両方で受信でき、複数の自治体と提携しているようです。
そうだね。
東京テレメッセージ社としてはポケベルが終焉しても、防災と言う切り口で、むしろ新しいサービスが始まっていると理解した方がいいだろうね。
ポケベルの時代が終わって新しい形のサービスが始まったことを理解しました。
次回ですが、PHSもさよならするそうですね。
PHSの終焉についても教えて下さい。
そうだね。
では、それは私が解説しよう。