IPよもやま話
I(愛)ちゃんとP(パパ)とO(小野田君)の会話が続きます。
今日は「スマートフォンと全固体電池の話」よね。
小野田君のレポートタイムよね。
はい、良く調べてきました。「全固体電池」は、スマートフォンや電気自動車(EV)にどんどん使われていくこれから期待の電池です。愛ちゃん、何でも質問して下さい。
簡単な質問からいくわ。
その「全固体電池」の「全」ってどういう意味なんですか?
文字通り電池を構成する中身が全て「固体」だということです。
今、スマートフォンに使われているのは「全固体」ではないんです。
四角の立派な固体よ!
今のスマートフォンの電池は違うんです。全固体に見えますが・・・・・。
スマートフォンに使われている今主流の電池は日本のソニーが開発した「リチウムイオン電池」で、多くの携帯電話やスマートフォン、デジタルカメラ、パソコン、一部のハイブリッド車や航空機にも搭載されるようになるなど、電池の王様みたいなものですが、電解液という液体も使われているんです。
そのことを図1で示します。リチウムイオン電池は、化学的な反応を利用した蓄電池で、電池内部は正極と負極と電解液で構成されているんですね。
つまり、電解液のある「一部液体電池」なんです。
では伺いますが「乾電池」は、「乾」があるから乾いていて「全固体」かしら?
図1 リチウムイオン電池と全固体電池
出典:GoGoEV(2017.9.25)資料を参考に藤島作成
いいえ、それも違います。
なぜ「乾電池」って言うのかしら?
私がよく使うのに「アルカリ乾電池」があるけど・・・・。(*1)
そんな質問がくると思って調べておきました。
乾電池は1888年に、ドイツのガスナーさんが「電解液」を石膏(せっこう)で固めて持ち歩いてもこぼれない電池を発明したんです。それまで使われていた「液体がこぼれ易い電池」に対して「乾いた電池」=「乾電池」と呼ばれたんです。
この発明によって電池が使い易くなり広く世の中に行き渡るきっかけになったんですね。
分りました。
では、本題の「全固体電池」について質問します。
「全固体電池」って、スマートフォンや電気自動車(EV)に使われるって言ったけど、突然生まれたの?
固体電解質の研究は20年以上前からあったそうですが、電解液を超える「リチウムイオンの通り道」をなかなか実現できなかったのです。それが2011年以降俄かに実現してきたんです。
「リチウムイオンの通り道」って何?
図2を見て下さい。
リチウムイオンが電極と電極の間を通る部分を「通り道」と言いました。
つまり「電解液や電解質の部分」ですね。
図2 全固体電池の意味(通り道)
出典・引用:日経エレクトロニクス
(2018年1月号)を参考に藤島作成
そうか、全固体電池って「電池の+(正極)と−(負極)の間に電界液がなくて、一種のセパレーター(通り道)だけがある電池」って言えばいいのかな?
そう、そう、その通り。
褒められたから調子に乗って、続けて質問します。
電池そのもののことは分ったけど今後「スマートフォンや電気自動車(EV)に使われるほどの魅力(メリット)」は何ですか?
はい。
では、そのメリット(特長)を列挙しますね。
表1を見て下さい。
表1 全固体電池の特長(メリット)
出典・引用:日経エレクトロニクス(2018年1月号)を参考に藤島作成
どんどん質問するわよ。
表1にたくさんメリットを挙げてくれたけど、どれがスマートフォンや電気自動車(EV)に効いてくるの?
そうですね。
例えば、②の「超高速充電」ですが、短い時間で充電できるようになるため、電気自動車(EV)向け電池としてとても期待が集まっています。トヨタ自動車は30年までに車載電池の開発・生産に1兆5000億円を投じていて、20年代前半にも全固体電池を実用化する計画で、既に200人規模の開発体制で東京工業大学などと開発を進めているそうです。
スマートフォンや充電器に使われている電池は「リチウムイオン電池」が主流ですが、発火した事故の報道がテレビなどで報じられています。①の発火のリスクが少なく、設計が容易な⑤、⑥、⑦ともあいまって全固体電池は、大きく期待されているんですね。
はい、理解できました。
全固体電池が、大きく期待されていることはよく分りました。
質問を続けるけど、「いいことばかり」なの?
いいえ、大きな課題もあるようです。
一番のハードルは「通り道(電解質)」が、「イオンが流れやすい固体の材料(高いイオン伝導性のもの)を見つけること」だといわれています。
まだ肝心の「電解質」が決まっていないの?
うん、そうだね。
現在、そうした材料として、セラミックスの細かな粒や、強誘電性物質を添加したポマーや、イオン伝導セラミックス、また無機固体系の全固体電池の電解質としてリン酸リチウムオキシナイトライド(通称LiPON)などの物質が研究されているんだ。
特にLiPONは有望視されているんだが、現在のリチウムイオン電池に使われている材料と比べると、性能はまだまだのようだね。
ただ、これから固形で電導度の高い電解質、またその特性に合わせた活性物質の研究が進むなど、技術が発達していけば、いずれ全固体電池の開発は大きく進むだろうね。
時間の問題だと思うよ。
そうなんだ。
じゃあ業界挙げて研究開発中ってことね。
とすると、まだまだ先の話のような気がするけど、世界中が本気になっているの?
小野田君、最後の質問は、世界でどのくらいのメーカーなどが真剣になっているか教えて下さい。
ちょっと調べただけでも
凄いね。
全固体電池も凄いものだと思ったけど、小野田君は私の質問をスラスラ答えたのも凄いと思いました。
次のテーマですが、スマートフォンを使っていると「眼」に病が出て「スマートフォンのIT眼症」って言うらしいの。このこと教えてくれないかな。
いいとも。次回は私がやろう。