IPよもやま話
I(愛)ちゃんとP(パパ)とO(小野田君)の会話が続きます。
今日はNTTの「IP網移行後の緊急通話の話」よね。
緊急通話って「110番とか119番の話」よね。
そうだ。
いま、救急車の出動回数や現場までの到達時間など、緊急通話に関する問題が多いが、ここでは技術面から見て、IP網移行後は私達にも警察庁や消防庁にとっても大事な大きな問題があるんだよ。
それって、前回言ってたけど、例えば泥棒に入られて「110番通報」したけど、泥棒に脅かされて電話を切ったりしたとき、警察の指令台から直ぐ呼び返しができるのに、IP網になったら、それが出来なくなるとか言ってた話ですか?
図1 110番通話の呼返し
そうだね。
問題点を正確に把握していて素晴らしい。
それが何故か?というのが、小野田君の質問さ。
それがIP網になると、何故呼び返せないの?
うーん、愛ちゃんに解ってもらえるか難しいが、説明するよ。図2を見てごらん。
現在NTTは、「固定電話(*1)から発信された緊急通報(110,118,119)において、次の機能を提供しているのは分るよね。
① 通報者の位置情報等(契約者等の住所、電話番号及び契約者名)を通知
② 通報者の電話番号から管轄する本部の指令台の接続先電話番号を特定
③ 輻輳時における優先接続
④ 通報者と受理機関との間の回線を保留
ところが、IP網になるとね、①②③は現行と同様に提供できるんだが、④項はIP網では技術的に提供できないため、通報者への呼び返しをコールバック方式により提供するしかないんだよ。
はい、やっぱり私には理解できません。(笑)
そうだろうよ。
だから図2を良く見て欲しいんだ。
図2 IP網移行後の緊急通話の呼び返し
出典:NTT資料(2017.4.21)を元に藤島作成
よく見ても分らないわ!
「呼切断」があったら「呼び返し」しても、IP網になったら、赤字の「コールバック」に変わっていることぐらいね。分るのは!
凄い、凄い、それで正解だよ。
でも、どうしてそうなるのか分らないわよ!
ごめん、ごめん。
その理由は、図3で説明しよう。
IP網に切り替わる前、つまり現状は「通話中」は回線を占有していだが、IP網ではパケットによる通信なので、回線を占有しないから技術的に今までのPSTN(公衆網)のような回線保留(呼び返し)を実現できないんだ。
図3 IP網移行後に回線保留できない理由
出典:NTT資料(2017.4.21)を元に藤島作成
ってことは、IPでは「おはよう」という言葉の宅急便の荷物を、1個づつバラバラの宅急便で送るってことね。だからその車が同じ道を走るとは限らないので、回線保留ができないってことね。
そうだ。
その小さな荷物のことを「パケット」っていうんだよ。
愛ちゃんが、こんなに頭が良い、理解力があるとは恐れ入りました。
IP網に切り替わると緊急通話でSOSを発信した人も、それを受ける指令台の人も影響がありますね。
そうよね。
そのことも整理して教えてくれないかな。
そうだね、それを整理すると表1のようになります。
そうか、SOSした人は、指令台のほうから「コールバック」で呼んでくれるので、実質的は「呼び返してくれる」ことになるのね。
そうだ。
警察庁や消防庁が「IP網対応」を迫られるのさ。
そのために、NTTは今から打ち合わせなどをして、対応をお願いしているんだね。
表1 IP網切替後の緊急通話対応
海上保安庁も関係するんですね。
図4 NTTの対応
そうだね。
緊急通話呼は「118番」で、「海上における事件や事故の緊急通報」が対象だよ。
ってことは、「119番と110番」を中心に勉強したけど、「118番」もあるのね。
その他にもいろいろあったわよね。
うん、主な特番(*2)を上げると表2のようにいろいろあるよ。この中で、今回の「呼び返し」などで「対応が必要な特番」について今回は勉強したのさ。
表2 主な電話の特番(茶色の特番がIP対応で課題のあるもの)
出典・引用:NTT東日本の公式ホームページ
話が前後しちゃうけど「電話の特番そのもの」の勉強をしていないわよね。
そこのところ教えて欲しいな。「119番」や「110番」以外の特番についてもね。
何か面白そうだもの。
はっはっは。
興味本位のテーマだね。
技術的な話は少ないから、たまには愛ちゃんが調べてきてくれないか?
えーっ、やぶ蛇やぶ蛇!