IPよもやま話
I(愛)ちゃんとP(パパ)とO(小野田君)の会話が続きます。
今日は「「6LoWPAN(シックスローパン)」の話」よね。
何のことか、サッパリ想像つかないわ!
はっはっは。
妙なネーミングだよね。
正式には「IPv6 over Low-Power Wireless Personal Area Networks」の略だ。
へーっ、略語の作り方が変よね。
でも仕方ないか!
私が文句言っても変るわけないしね。誰が決めたの?
これは「IoTの規格」でね。
2007年にRFC4944として標準化されたんだ。
IoTについては勉強したばかりだから分るよね。
はい、でもRFCって何?勉強していないわ。
小野田君説明できるかな?
はい、できます。
RFCとは、インターネットに関する技術の標準を定める機関であるIETF(*1)が正式に発行する文書のことです。
あらー、その説明では理解できないわ。
IETFって何?
そうですね。
では、世界の通信の標準規格を決める機関に「ITU-T」(*2)というのがあることを知っていますか?
えー、昔「CCITT」(*3)というのがあったけど、それが「ITU-T」に変ったことだけはパパに教わった記憶があります。詳しくは忘れたけど・・・。
そうです。
話題が脱線した感じですが、「IETF」と「ITU-T」について説明します。
大雑把に言えば、図1にあるように、ITU-Tは電話の、IETFはインターネットの標準規格を策定する機関といっていいでしょう。
図1 ITU-TとIETF
余計なことをいうと、もう旧聞になるがインターネットのプロトコルに、両者が決めたものが並存したことがあるんだよ。
えーっ、別々の規格があったらメーカーもユーザーも迷わなかったんですか?
うん、PBXネットワークに使われたはじめの頃のGW(ゲートウェイ)に両者があったんだね。電話の信頼度優先の文化で出来た「H.323(エッチドット323)」とインターネットの融通性優先の文化で出来た「SIP(シップ)」が並存したんだが、いまはSIPが完全主流になったね。
ごめん、ITUとIETFのことは、それくらいでいいわ。
本題の「6LoWPAN」について教えてくれませんか。
はいはい。
この標準化の目的は「IPv6プロトコルをIEEE802.15.4無線LAN上で稼働させること」
なんだ。
具体的なイメージが湧かないんですが?
そうか、では図2を見てくれ給え。
6LoWPAN(シックスローパン)とは「各ノードがIPv6アドレスを持つ低消費電力でオープンなワイヤレス・メッシュ・ネットワーク」のこと、といったら分るかな?
図2 6LowPANのイメージ図
はい、何となく理解できます。
愛ちゃんは?
よく分りません。
そうか、「IEEE802.15.4」について、話さないと理解できないかもしれないね。
モノのインターネット(Internet of Things :IoT)の実現に適した無線方式として従来の無線方式(WiFi、Bluetooth)を補うためにIEEEで策定されたナローバンド(狭帯域)で低消費電力なIEEE802.15.4があるんだよ。
そして、IEEE802.15.4はセンサーからの情報やコントロールのための制御信号を送受信するための無線規格で、低消費電力で動作し、ナローバンド(狭帯域)で端末に割り当て可能なIDも32ビット(約40億個)と十分で、ワイヤレスセンサーネットワークに適した無線方式だ。強力な暗号化機能(AES-128)も装備しているんだよ。
それで、IoTとの係わり合いは?
いいね、核心的な質問だ。
IoTを実現するためには、インターネットを介して"モノ"をモニターしたりコントロールする必要があるよね。
その際には接続されているそれぞれの個体を識別するIDが必要になるんだが、このIDを振る場合に2つの方法があってね。
それは、①ローカルなアドレスを振る方法と②グローバルなアドレスを振る方法があるんだ。
図3 IoT実現法は2つ
これを少し説明しよう。
①のローカルなアドレスを振る方法は、まず、IPネットワークとIEEE802.15.4との間にゲートウェイ装置を配置してIEEE802.15.4のネットワークアドレスに変換するんだね。これによって、IEEE802.15.4ネットワークに接続された機器がIPネットワークと通信が可能になり、IoTを実現するんだ。
通信はどうやって実現されますか?
ゲートウエイによって、IEEE802.15.4をイーサーネットやWiFi、3G携帯網等に接続し、インターネットを介して様々なセンサーや機器が通信できるんだよ。
スマートフォンやタブレットPC、または遠隔地のパソコンでIEEE802.15.4機器からの情報を受けたり、IEEE802.15.4機器の制御をしたりでき、IoTを実現するのさ。
もう一つの「グローバルなアドレス付与」は?
うん、インターネットの場合は、IPアドレスが使用されるんだ。
IPアドレスには32ビットの「IPv4」(約40億個)と128ビットの「IPv6」(約340澗)があることは、この前勉強したね。(*4)
グローバルアドレスの場合、IoTでネット接続するモノの数が増えると、アドレスが枯渇してしまうことも勉強したろう?
だから、IPv6を"モノ"に割り当てることも可能なんだ。
アドレスのことは分ります。
IEEE802.15.4ネットワークにIPv6のデータパケットを通す為に6LoWPANというIETFにより策定されているこの通信プロトコルによってIEEE802.15.4を搭載した機器をIP網に接続することができるんだね。よって、6LoWPANによりIEEE802.15.4を搭載した機器をインターネットを経由して有線通信(イーサーネット)やWiFi、Bluetooth、3G等を搭載した機器と通信可能にし、IoTを実現するのさ。
有難うございます。
大体理解できました。
パパ、次回のテーマだけど、リクエストしていいかな。
先日テレビで「ランサムウェア」の話題があったの。
「身代金」を要求される物騒なウィルスらしんだけど、分り易く説明してくれないかな。
了解。