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Hitachi

I(愛)ちゃんとP(パパ)とO(小野田君)の会話が続きます。

イラスト

Iちゃん

今日は「グラフェン」の話をパパがしてくれるんだったわよね。
スマホなんかに使われる「新素材」だったわよね。

Pパパ

そうだ。
グラフェンと言う素材は、いま、世界で最も薄いんだが、発見は偶然だったそうだ。
そして、ノーベル賞も受賞したんだよ。

Iちゃん

へぇー、偶然てどういうこと?

Pパパ

図1 グラフェンは曲げてもOK
図1 グラフェンは曲げてもOK

グラフェン(graphene)はね、2004年に、アンドレ・ガイムとコンスタンチン・ノボセロフが、セロファンテープとグラファイトの塊(そう、まさに鉛筆の芯だ)で遊んでいて、ほとんど偶然発見したんだ。
炭素原子の層1枚のみで構成されていて、図1のように曲げても平気なんだ。

Iちゃん

世界一薄いって、どのくらいの厚さなの?

Pパパ

図2 グラフェンの構造
図2 グラフェンの構造
<補足>1原子の厚さのsp2結合炭素原子のシート。炭素原子とその結合からできた蜂の巣のような六角形格子構造をとっている。

1mmの厚さにするためには300万枚も重ねる必要があるほどだ。
あまりに薄いので、2次元に見なすことができるそうだ。
そしてこの素材は「鉄よりも100倍丈夫で6倍の弾性」があるんだそうだ。

Iちゃん

凄ーい!

Pパパ

更に凄いのは、熱と電気を通すのにもかかわず、図2のように規則的な6角形の安定した構造を持っていて、殆ど透明だと言うことだ。

小野田君

ノーベル賞を受賞したといわれましたね。
その辺のこと教えてくれませんか?

Pパパ

先ほど紹介した二人の科学者は、2010年に物理学賞を受賞したんだ。
それがね、グラフェンを発見してからたった数年後に受賞したんだが、こんなケースは稀だよね。先ごろ日本の受賞者大隅良典東京工大栄誉教授の「オートファジー」などは、研究開始後28年も経ってからの受賞だし生理学・医学賞の大村智さんの例では研究開始ではなく1981年のイベルメクチ(動物薬)として商品化されてから数えても35年も経ってからというくらいだからね。

Iちゃん

ノーベル賞を受賞するくらい凄い素材って、どんな使い方があるの?

Pパパ

愛ちゃん、君はそそっかしいので、スマホを落として壊してしまった(割れた)ことがあるだろう?

Iちゃん

えー、何回もあるわ。

Pパパ

それが、このグラフェンを使えば大丈夫なんだ。
それどころか図1のように折ったり丸めたりすることも出来るようになるんだ。

小野田君

グラフェンの特長を具体的にあげるとどんなことでしょうか?

Pパパ

そうだね。
次のように5つくらいあるね。

図3 グラフェンの5大特長
図3 グラフェンの5大特長

Iちゃん

歩行中にスマホを落としてディスプレイが割れたことがあったけど、このグラフェンなら大丈夫なのね?

Pパパ

そうだ。
当面は(コストや製造面の安定化などの課題があるものの)「モバイル端末や医療機器」がターゲットとされているんだ。
その応用の可能性は、物凄く広くて図4に示したように、無限に広がっていく感じだ。

Iちゃん

図4 グラフェンの応用分野
図4 グラフェンの応用分野
出典・引用:matome.naver.jp(2014.7.13)を参考に藤島作成

その図4の①のスマホ等のモバイル端末が有望って言われたけど、もう製品化されているの?

小野田君

うん。日本ではないんだが、中国の重慶で開かれた「重慶CASフェア」(*1)の中国科学院ブースで「曲げられるスマホ」が人気を集めたそうだね。

Iちゃん

曲げられるスマホなんて見たことないな。

小野田君

それはそうだろう。
世界初だそうだからね。

Iちゃん

その宣伝文句は?

Pパパ

次の4つを強調している。
①従来のスマホより少し細長くなっている。
②スクリーンの大きさは5.2インチで、重さはほんの200グラム
③腕時計のように手首に巻き付けることができる。
 (曲げることができない電池などの部品は両端に取り付け)
④最大の特徴はウェアラブルでタッチパネルもついており、電話やネットも可能なAndroidのスマートフォン

Iちゃん

でも、展示出品だけで売られてはいないんでしょ!

Pパパ

いやいや、この会社では2016年末、6.23インチのモノトーンの曲げられるスマホを市場で売り出す予定(私はまだ確認していないが)で、カラーバージョンは2018年に披露される見込みだそうだ。

Iちゃん

あらー!
じゃあ日本は遅れているの?
グラフェン後進国なの?

Pパパ

いやいや、グラフェンの量産技術では世界に先駆けて画期的な技術開発を推進しているんだよ。

Iちゃん

えーっ! 本当?

Pパパ

図5 日本が先行!
図5 日本が先行!

大阪ガスと、東京大学の新しい生産技術の特許権を得たADEKA(*2)が先行しているようだね。
大阪ガスは、価格を半分に引き下げる技術を開発したそうで、2016年中に商業生産を開始し、サンプル出荷に踏み切るとのことだ。この技術では従来法と比べて2倍の生産性を実現し、キログラム当り1万円以下で販売できる目途が立ったそうだよ。

Iちゃん

そうなんだ。頑張っているのね
ADEKAは、東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻の相田卓三教授らの開発したグラフェンの製造技術に関する特許の独占ライセンスを取得しています。2015年10月には、本格的なサンプル提供を開始したと発表しました。

Pパパ

そうだね。
このほかには、民間企業との提携は不透明だが、東北大学原子分子材料科学高等研究機構と東京大学研究グループがグラフェンの超電導化に成功したと2016年2月4日にプレスリリースを出しているね。

Iちゃん

そうすると、これから「グラフェン」という素材が色んなところに使われるようになるのね。

Pパパ

そうだね。
これからの各種の端末機器は「ウェアラブル」になると言われているが、それにも応用されるだろうし、目が離せない素材といっていいだろう。
最近の情報だが、日本で「世界初」のニュースがある。(*3)
それは「グラフェンを用いた新原理ガスセンサー」で従来のセンサーと比較して、10倍以上の感度を実現したというんだよ。

小野田君

そのニュースはいつ発表されましたか?

Pパパ

昨年(2016年)の12月5日だから、新しい情報だね。
このセンサーは、通常のシリコントランジスタのゲート部分を原子一層分の厚みのグラフェンで置き換えた構造を持っていて、ガス分子がグラフェンに吸着すると、グラフェンの仕事関数が変化し、シリコントランジスタのスイッチング特性が変化する原理を利用することで、ガスを検出する仕組みなんだそうだ。

Iちゃん

有難う。
友達に自慢できる「雑学の知識」が1つ増えたわ。

小野田君

私に「次回のテーマ」で、お願いがあります。
私は無線LANに弱いんですが、先日「6LoWPAN」という用語を見ました。
何か「IoTの規格」でもあるし「無線LANの規格」とも関連があるようなので、中身を知りたいんです。

Pパパ

いいとも。了解。

*1
重慶CASフェア:第12回でグラフェンが中国科学館ブースで2016年4月23日「曲げられるスマートフォン」が人気を集めた。
*2
ADEKA:株式会社ADEKA(旧旭電化工業)のこと。化学品と食品の素材メーカー。情報・電子化学品、樹脂添加剤などの化学品や、製パン・製菓用のリスブランドマーガリン、ショートニング、クリーム、フィリングなどの食品を扱う。
*3
新しい情報:出典は、EE Times Japan(2016年12月6日)

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