IPよもやま話
I(愛)ちゃんとP(パパ)とO(小野田君)の会話が続きます。
今日は「デジタル教科書」の話だったわね。
小野田君が担当してくれるのよね。
わたし、いつも楽をしていてごめんね。
図1 デジタル教科書とは
はっはっは。
この次くらい担当して貰うから覚悟していなさい。
では、小野田君始めてくれないか。
はい。
「デジタル教科書」とは何かから説明します。
まず、パソコンやタブレット、スマホの類が上げられると思いますが、それにネットワーク(インターネット)、アプリケーションソフトなどの「あらゆるデジタル技術」を使って実現される「学習教材」(図1)のことをいいます。
イメージが湧くわ。
でも、どうして最近急に話題になったの?
最近でもないようです。
2009年11月に、当時の原口総務大臣が原口ビジョンとして「一人一台のデジタル教科書の導入」に言及されて期待が高まったことに始まります。技術の進歩やiPadを初めとしたスレート型PCやスマホや電子書籍が急激に普及してきたことも一因のようです。
じゃあ、もう我が国で使われているの?
はい、例えば「光村出版」(*1)や「東京書籍」(*2)から「デジタル教科書」が発売されています。
そうなんだ。
生徒は具体的にはどんな授業を受けるのかしら?
はい。
まず生徒は、タッチパネルや無線LAN環境を基に、今までの紙ベースの教科書の変わりにPCを使います。PCは、視覚的な表現力が高いですからそれが狙いです。
各生徒が一人1台持つPCと今までの黒板に変わる「電子黒板」が使われます。
今までの黒板と電子黒板は、どう違うの?
電子黒板はネットワークに接続されています。
生徒のPCに書き込まれた情報を電子黒板に表示するなどで、相互の情報共有をしながら授業が進められるんです。
なるほど。
いままでの教科書に相当するデータは、生徒が持っているPCのコンテンツやアプリとして活用されるので、PC内のコンテンツを切り替えるだけで、各科目の授業準備ができてしまうんです。
ふーん。デジタル教科書のいい点(メリット)って何があるの?
はい。指や専用のペンなどで写真や画像を拡大して細部を確認できるし、英単語の発音を音声で確認できたりします。このため、視聴覚を使った理解度の高くなる教育ができますね。
そうか。
じゃあ、いままでの教科書には書き込みをすると叱られたりするけど、デジタル教材には簡単に書き込みもできるので小学生などの興味を集めて意欲的に勉強したり発表したりするようになるかもね。
でも、デメリットは無いのかな?
それはあります。
教える教師側にある程度の機械的、ソフト的知識が求められるけど、それが不足していたりすると、教師による指導力のバラツキなどが発生します。
それと、検索すると瞬時に情報が表示されるので、生徒が「自分の手や頭を使わなくなる恐れ」もあります。
図2 教師も順応性が必要
教師も新しい環境や教育方法に
適合する必要がある
その点は大きな問題だね。
検索できない事柄に関して、自分の手や頭を使って考えて答を出す力がなくなってくる恐れがあると云うことだ。
それと現場の教師が新しい環境や教育方法に適合するのに時間がかかることも懸念されるね。
ところで、「デジタル教科書」の普及はどんなペースで進むのかな?
国レベルの計画があるんだろう?
はい、それについても調べて来ました。
2020年度から本格的に導入される見通しになったのです。
それはどうして?
今年(2016年)4月に開催された文部科学省の有識者会議「デジタル教科書の位置付けに関する検討会議」(*3)で、副教材ではなく、紙の教科書と併用しつつも教科書として位置付けることを前提とした「中間まとめに向けた論点整理」が提出されたんです。
そして、その最終報告は2016年度中に纏まる見込みなんだそうです。
すると着々と普及のペースの乗っていくと思われるが、どんなステップになるのかな?
はい。
先ず「指導者用デジタル教科書」が先行していきます。
そして普及のためには「無線LAN環境の整備」が急務になりますね。
そのことを示したグラフを2点紹介します。
図3 指導者用デジタル教科書の整備状況
出典:KDDI資料(法人のお客様)
「平成22年度〜平成26年度 学校における教育の情報化の実態
に関する調査結果(概要)(文部科学省)を元に作成
文部科学省が2011年に公表した「教育の情報化ビジョン」では、デジタル教科書を「デジタル機器や情報端末向け教材のうち、紙の教科書の内容と、それを閲覧するためのソフトウェアに加え、編集、移動、追加、削除などの基本機能を最低限備えるもの」と定義し①電子黒板で先生が利用することを想定した「指導用デジタル教科書」と②子ども達が個々に利用する「学習用デジタル教科書」の2種類に分類しているんです。
その指導者用デジタル教科書の公立学校(小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校)での利用率は図3のように、2015年3月時点で39.4%に達しているんですね。
佐賀県などは全国一で、96.1%とほぼ全ての公立学校で活用されているそうです。
現状を一言でいうならば「指導者用デジタル教科書」が先行しているということでしょうか。
それはいいことじゃない?
先生の方が先行しないとまずいよね。
そうですね。そして、図4で分ることは、子供達が普段の教育を受けている普通教室のLAN整備率は2015年3月時点で86.4%に達しているものの、校内LANに加えて無線LANも整備している割合はまだまだで23.5%に過ぎないことですね。
図4 全国公立学校の普通教室の校内LAN整備率
(出典:KDDI資料/法人のお皆様)
調査対象:全国の公立学校(小学校、中学校、中等教育学校および特別支援学校調査基準日:3月1日
「平成26年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)(文部科学省)」を元に作成
そうだね。
LAN環境はベースになるものだから整備が急がれるところだね。
そうですね。
学習者用デジタル教科書を利用する主な情報端末は「タブレット端末」になりそうですね。
そのためにも教室の無線LAN環境は整備を急がれると思います。
うん、そのために総務省は無線LANの導入のための補助予算を概算請求するとも言われているね。
図5 事例で使用の端末
出典:KDDI資料(法人のお客様へ)
学習用デジタル教科書を十二分に活用するためには、校内だけではなく、家庭などの校外においても活用できる通信環境整備も課題になってきますが、この課題のヒントになる「タブレット活用事例」があります。
それが、工学院大学付属中学校の事例です。
2015年4月から中学1年生全員にタブレットを貸与して、一部の双方向型授業で活用を開始したんですね。
導入したタブレットはKDDIのLTE対応モデルで、LTE対応としたのは、無線LAN環境が整備された校内だけではなく、通学中や自宅などでも主体的に学習してほしいという考えからだったそうです。(*4)
事例もあるのね。
そうです。
文部科学省の検討会議(前述)の中間まとめの論点整理には『紙の教科書との併用制であれ、デジタル教科書を導入する場合には、導入形態に応じたネットワーク環境の整備を前提とすべきとあります。そして、宿題や家庭学習など、家庭におけるデジタル教科書の使用については、家庭にネットワーク環境が整備されていない児童生徒に配慮した形態が必要。』とも記載されています。
外国の事例も分りますか?
はい、私の調べた範囲では表1のようになっています。
表1 デジタル教科書の海外の普及状況
デジタル教科書のこと良く分りました。
若い若いと思っていたけど「アナログ教科書」だけで育った私はもう「おばさん」だって認識させられました。
はっはっは。
愛ちゃんも「おばさん」になったか!
そのおばさんからリクエストがあるの。
私のお友達の会社で「在宅勤務制度」が始まったそうです。
「テレワーク」よね。まだ、この勉強会のテーマになっていなかったと思うので、次回お願いします。
いやいや、これは「おばさんのテーマ」にしよう。
愛ちゃん、次回担当を頼むよ。
あちゃー、参ったな。
了解です。