IPよもやま話
I(愛)ちゃんとP(パパ)とO(小野田君)の会話が続きます。
今日は、小野田君のリクエストの、私は全く聞いたことは無かったキーワードの「フィンテック」の話でしたね。よろしくお願いします。
そうだね。
比較的新しく生まれた用語だが、もう結構実態が生まれているんだよ。
そうでしたか。
でも、アンテナが低かったのか畑違いだったからか、ずっと知らなかった用語でしたが、先日NHKTVの朝のニュース(*1)でやっていたのをみました。
ほほう。
それで内容は覚えているのかい?
いいえ、すみません。
確か住友生命とソフトバンクの提携だったと思います。
うんうん。その通りだ。
その話は、後で説明するとして、まず「フィンテック」とは何か説明しょう。
英語では「FinTech」って書くんだが、この造語に意味があるんだね。
図1のようにファイナンス(Finance)とテクノロジー(Technology)を合わせた造語なんだ。
図1 フィンテック(FinTech)は造語
ファイナンスって「金融とか企業財務」だし、テクノロジーって「技術」だよね。
するとどんな意味になるの?
そうだね、この造語の日本語訳は「金融IT」とか「金融テクノロジー」とかになるんだが、最近では、金融IT分野のベンチャー企業(新興企業だね)を「フィンテック企業」などと呼ぶこともあるんだよ。
このように「フィンテック」は企業テクノロジーそのものを言ったり、その分野の企業を指すこともある用語だね。
ついでに言うと、英語でもキチンと伝わる単語だ。
そうなんですか。
よく日本で造られた「和製英語」がありますが、海外の方との会話に使ってもいいんですね。
あらあら小野田君、海外の方との会話もあるの?
いやいや、そういう訳ではないんですが、用語の性格の確認です。(冷や汗)
図2 主なツール
フィンテックには
「スマホ」が主役的存在
比較的新しい用語ではあるね。
日本では、2014年頃に日経新聞が使い始めたんだ。
でも、アメリカでは5年以上前から使われているんだ。
パパ、用語の解説は分ったわ。
中身の話をして!
はいはい。
使われ方の事例を話した方が愛ちゃんには分かり易いかな。
その中でも、身近な「スマホ」利用の事例から紹介するかな。
「フィンテック」として一番有名なのが「スマホでカード決済する事例」だ。
iPhoneやAndroid携帯などに小さな器具を取り付けるだけでクレジットカード決済が出来るもので、Squareや楽天スマートペイなどが有名だね。
クレジットカードで代金支払いするのに、お店には専用の端末があって決済してるけど、それが変わるの?
そうそう、従来はクレジットカード決済端末という大きな機械を購入し、それを電話回線などにつなぐことでクレジットカード決済は行われていたんだが、フィンテックを活用したモバイル決済では携帯電話で決済が出来るので、最小限の器具のみでクレジットカード決済が出来るようになったんだよ。
カードの変わりにスマホが使えるのはいいけど、それほど画期的とも思わないな。
そうかね。
こんな分かり易い事例もあるよ。
といった例だ。
そうそう、小野田君の言っていた「住友生命とソフトバンクの提携の事例」についても説明しよう。
住友生命は保険契約者の死亡保険や医療保険の保険料を「健康状態や運動のデータを貰ってそれを基に保険料の割引をするサービス」にしようとしているんだ。
ははあ。
それだと他の保険会社の保険と差別化できて加入者が増えるかもしれないよね。
具体的にはどうするの?
契約者は、スマホや専用端末を使って「毎日の歩いた距離や心拍数のデータ」を送るんだ。
住友生命は、そのデータを基に保険料を見直して、保険料を年間最大で30%も割引する、といったものだ。
もうやっているの?
再来年から実施する目標とのことだ。
そうですか。
生命保険会社間の競争や、IT企業が金融市場に参入してくると、銀行業界にとっては脅威になりませんか?
そう、そのとおり。
日本のメガバンクは、相次いでフィンテックの専門部署を立ち上げ、ベンチャー企業との提携や買収を進めはじめているんだよ。
そうかなぁ。
今聞いたぐらいなら、そんなに画期的なものじゃない気がするんだけど?
はっはっは。今日の愛ちゃんは「疑い深い」ね。
じゃあ、これでもか!というくらい事例を並べてみよう。
表1だ。
表1 日本で広がるFinTechサービス
出典:日本経済新聞電子版(2015.9.7)
本当だ!
もうこんなに事例があるのー!
図3 びっくり愛ちゃん
そうなんだ。
スマホでのカード決済(表中1項)や自動で家計簿が作れるクラウド家計簿(表中3項)や、会社の経理管理もできてしまうクラウド会計ソフト(表中4項)などがあるよね。
そして、その担い手が表にもあるように楽天やヤフーを含む「新たな金融業の柱」が登場してきたことも分るだろう?
そうですね。
フィンテックはITを駆使することで、金融を身近なものにしますね。
銀行側の反応はどうなんですか?
銀行は無くなってしまいますか?
うんうん、鋭い質問だね。
フィンテックの流れの中で「銀行が無くなる」と云う人もいるくらいなんだ。
そうよね。
音楽配信サービスの登場普及で「レコード店、CDショップ」が殆ど無くなったし、デジカメやスマホの普及で「写真屋さん」もなくなってしまったものね。
そうなんだ。
両者の関係はパイの奪い合いだろうからその心配もあると思うんだが、銀行サイドの発言を聞くと「フィンテックの動きはウエルカム」だとか「ただ顧客にとって便利なサービスがどんどん出てくることは、むしろパイの拡大につながります。両者が共存共栄していくのがFinTechの本筋と考えています」とかいう発言(*2)もあってね。
本心かな?
何かやせ我慢のように聞こえるけど?
そうでもないんじゃないかな。
新たな参入者によって金融の既存のビジネス領域が破壊されると言うより、規制などで自らなかなか殻を破ることができない中、そのジレンマから抜け出す良いきっかけを与えてくれるものであり、金融における新しい価値を生み出していくという点では同志だと言う気持もあると思うよ。
既存の金融業界の具体的な動きはありますか?
図4 フィンテックへの新規参入
補足:
この他、諸外国を含む各種企の参入もある。(*3)
メガバンクも変わってきているね。
三井住友銀行の「第1回SMBCオープンイノベーションミートアップ」や三菱UFJ銀行の「Fintech Challenge 2015」といった動きも、フィンテックへの新しいアプローチで、銀行も相次いで「フィンテックに参入」してきているんだよ。
この他の銀行、みずほ銀行やふくおかフィナンシャルグループも新規参入しているしね。
一般企業はどうですか?
大手IT企業も参入してきているね。
「日本IBM」「富士通」「NTTデータ」「野村総合研究所」「電通国際情報サービス」などだ。
そうすると、これからの動向が見ものですね。
ところで、日本の立ち位置というか、普及のレベルはどんな感じですか?
それがね、フィンテック投資について日本は中国の30分の1で2015年は65億円に留まっているんだ。そのデータは表2に示したよ。
表2 フィンテック投資額
出典:
2015年の集計日本経済新聞電子版
(2015.8.24)(*4)
えーつ!
先進国でダントツの最下位じゃないの!
そうだね。日本はフィンテックの潮流に完全に乗り遅れているね。アメリカの0.5%だし、アジアでも中国の1/30インドの1/25でどんどん差が広がっている状況だ。
そうなんだ。
日本は頑張らないといけないのかな?
パパ、フィンテックに期待できることって何かしら?
ほほう。いい質問をするね。
日本では、政府が目指す「観光立国」の実現や、2020年の東京オリンピックもあって、今後は訪日観光客や外国人居住者が増えていくことは間違いないよね。
また、少子高齢化の中でGDP(国内総生産)を高めていかなければならないこともあるよね。
今ね、海外からの観光客は、1週間ほどの滞在で1人当り平均25万円くらいお金を使ってくれるんだそうだ。
つまり6〜7人の外人観光客の消費金額は、日本の人口が1人増えたことに匹敵する年間消費になるということだ。結果的にGDPを押し上げることになり、日本経済の持続的発展にもなるだろうし、グローバル社会にもつながるだろう。
分ったけど、パパ、何を言いたいの?
図5 フィンテックへの期待
つまり、外国人が「来易い国」にする必要があるということだ。そしてそのための新しいサービスをどんどん生み出す必要があるということです。
同時に日本人もどんどん海外に行って、便利な通貨交換や決済サービスが必要と言うことだね。
そうか!
諸外国と文化の融合や経済効果を「フィンテック」で結びつけていくってことですね。
この話は理解しました。
次回は、私からのリクエストです。
相当以前この勉強会で「ブルートゥース」を勉強したことがあった(*5)けど、最近「Bluetooth5」って用語を聞いたの。5になったって、何か進化したのか、教えて欲しいんだけど。
了解!