IPよもやま話
I(愛)ちゃんとP(パパ)とO(小野田君)の会話が続きます。
今日は「公衆電話減少の話」だったわよね。
先日、2年間も監禁されていた女の子が「公衆電話で助かった話」もあったのに、どうして
公衆電話ってどんどん減少しているのか知りたかったの。
その辺を含めて「公衆電話」について、いろいろ教えて下さい。
小野田君、よく調べてきたかな?
はい、調べて来ました。
言い出しっぺの愛ちゃんに質問するけど、公衆電話そのものはいつ頃生まれたのか「誕生日」を知っていますか?
えーっ、そんなの分るわけないでしょう!
いつですか?
何と今から126年も前の1890年(明治23年)の12月に東京と横浜に電話局が設置され電話サービスが始まったんだけど、同時に公衆電話も生まれたんだそうです。
でもその時には、電話機そのものは電話局内に設置されていて、いわゆる「公衆電話ボックス」が生まれたのは、10年後の1895年で東京の京橋に設置されたのが初めてだったそうです。
そうなんだ。
そんな古くからの歴史があったのね。
では、もう1問。
公衆電話の数の最盛期はいつで何台くらいあって、今はどの位に減っちゃったか分りますか?
図1 公衆電話機の数の減少
最盛期の4分の1に減少!
自慢じゃないけど、分る筈ないでしょ!
そうですよね。
私も調べて分ったんですから。
私が調べた限りの最盛期は2000年の70万台以上だったんですが、現在(*1)は約18万台強と最盛期の1/4まで減少しているんですね。
図2 怒りの愛ちゃん
あらー!
そんなに減らしちゃっていいのー!
女の子のSOS以外にも公衆電話の効用はあるし、絶対必要なツールでしょうに!
ほほう、愛ちゃん怒ってるね。
確かに、公衆電話の効用は大きいものがあるよね。
この勉強会でも「災害時の対応」について学んだよね。(*2)
図3 公衆電話の効用
そうですね。
改めて「公衆電話の効用」を調べましたが、凄いことが分ります。
それが図3です。
まず1番目ですが、公衆電話では、硬貨やテレホンカードなしで、110番(警察)や119番(消防)、118番(海上保安)に通報できるんですね。
えーっ、そうなの。
だったら、この間の監禁されてSOSをした女の子も、わざわざコンビニで500円硬貨をくずして10円玉を作らなくてもよかったってこと?
えー、それはそうでしたが、必死だったんでしょうし、「電話機に書いてあるものもある」んですが知らなかったんでしょうね。(*3)
2番目の「停電時でもOK」ですが、電話は固定電話(アナログ、INS64)も公衆電話も電話局から電源供給を受けているので、商用電源が停電になっても大丈夫なんですね。
公衆電話機に液晶ディスプレィや赤いランプがあるけど、それが消えていても大丈夫なのよね。
おやおや、愛ちゃん凄いことを知ってるね。
はい、消えていても受話器を上げれば通常のように使えます。
3番目の「災害時にもつながり易い」は、このコラムの第73回に詳しく説明がありますが、その時の図が分かり易いので、図4に再掲します。
図からわかるように「IP電話」「固定&携帯電話」よりも「公衆電話」が一番なんです。
図4 災害時にかかり易い電話の順序(再掲)
「電源バックアップがあるIP電話」も公衆電話並みになってるけど?
えー、でも一般にはなかなかないですからね。
小野田君、図3の4番目の「今後はWi-Fi機能がつく」というのは?
はい、今後はWi-Fi機能がつくかもしれません。
公衆電話ボックスに市町村などの無料Wi-Fiを導入する取り組みが始まっているそうです。
あーっびっくりした!
公衆電話機そのものにつくのかと思ったら、公衆電話ボックスの中にWi-Fiのアンテナ(アクセスポイント)がつくってことね。
でも、それでもいいわ。
具体的な事例はあるの?
東京都千代田区の電話ボックスで去年の12月から始めて、今年の3月25日に更に拡充したそうですが、「CHIYODA Free Wi-Fi」が使えるようになっているそうです。スマホなどを持って近づけば無料で一定時間インターネットに接続して通信ができるそうで、災害時の安否確認や情報入手はもちろん、観光の便利さを考えての措置だそうですね。
そうか、それは私としたことが不勉強だった。
更に拡充されるんだろうね。
はい。NTT東日本は3月4日より、Wi-Fi付属機器の収納用に公衆電話ボックスの一部スペースの貸し出しを開始しているそうなので、どんどん増えていくと思います。
良く分ったわ。
でも、しつこいようだけど、そんなに効用の高い公衆電話がどんどん減少していくのは、許せないわ!
「減らさないで!むしろ増やして!」ってNTTに強く要望したいな。
愛ちゃんが、さらに怒るようなことがあります。
あまり知らないでしょうが、利用料金も値上がりしているんです。
えーっ、ますます許せないわ!
はっはっは、でもちゃんとした理由もあるし、法律もあるんだよね。
図5 公衆電話機の設置基準
はい。
では、設置台数に関する法律の話からいきます。
「電気通信事業法施行規則」によれば、「公衆電話は社会生活上の安全及び戸外での最低限の通信手段を確保する観点により、市街地(国政調査結果による人口集中地区)では500メートル四方に1台、それ以外の地域(世帯や事業所が存在する地域)では1キロ四方に1台は設置すること」
(*4)が求められているんですね。(図5)
あら、そんなこと言ったって、どこに設置されているかよく分らないわ!
災害が起こる前に知っておく必要がありますよね。
NTTのホームページで設置場所が分かるようになっているので、愛ちゃんも事前チェックをお願いします。
わかりました。
では、料金の値上げについて、その理由もちゃんと教えてください。
まだ怒っているね。(笑い)
実は、2014年4月1日から、消費税が5%から8%に変更されることになったことを受け、公衆電話の「課金秒数」が変更になったんです。
例えば、市内(区域内)通話料金を、現在の1分10円から、57.5秒10円に設定を変更して、2.5秒分値上げすることになりました。
また、市外(区域外)通話時間も0.5〜2.5秒短縮されるんです。(*5)
わー。酷いね。
でも、NTT側にも理由があるんですね。
1台当たりの維持費は月約4千円程度で、1カ月当たりの利用者の通話料が4千円を下回ると取り外しの対象としているんですが、それはNTT東、西日本合わせた11年度の公衆電話の事業赤字は約83億円に上って入ることも一因なんです。
図6 料金値上げ
そうか、それも理解できるけどね。
NTTの本音は「この、公衆電話の利用料の値上げを公表することによって、世間に、あえて、もう一度、公衆電話に注目して欲しい。ぜひ、利用して欲しい」
こともあるそうです。
うーん、いろいろ分ったけど、台数はこれ以上減らさないで欲しいですね。
そうそう、公衆電話は26年ぶりに増加したって話が、最近の新聞に報道(*6)されていました。
それによると、災害時に備えて、回線だけ用意しておき、いざという時に使えるようにする「事前設置型」を増やしているんだそうです。
2015年には前の年より8000台増えて事前設置型が全国で5万回線近くなり、16年度には遂に公衆電話機数全体が増加に転じるんだそうです。
小野田君の勉強振りもなかなかポイントついていて良かったよ。
16年度は増加に転じるそうで、愛ちゃんの機嫌も少しは直るかな?
ところでお二人は「ビジネスメール詐欺」って言葉を聞いたことがあるかな?
ありませーん。
では、次回はその話をしてあげよう。
お願いします。
*1 現在の数:2015年3月末の数字
*2 以前の勉強会:このコラムの第73回〜第81回。特に第73回。
*3 表示あり電話機:テレビ報道された駅の公衆電話には表示があった。
*4 その法律:電気通信事業法施行規則:第十四条のニ
*5 公衆電話の新料金:下表参照
*6 新聞報道:東京新聞(2016年8月28日朝刊)
表1 公衆電話料金(2014年4月1日以降)
(出典:NTTホームページ)