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Hitachi

I(愛)ちゃんとP(パパ)とO(小野田君)の会話が続きます。

イラスト

Iちゃん

今日は、山手線などの「電車内での携帯電話の使用マナー変更の話」だったわよね。
私のリクエストテーマなので、良く聞きます。

Pパパ

いやはや、この程度のことは自分で調べて貰いたいが、前回頑張ったから仕方ないことにしたんだったね。
では、まず愛ちゃんに聞くが、電車の中のアナウンスはどう変わったのか気付いたかな?

Iちゃん

はい。
私の乗った山手線では「優先席付近では混雑時には電源を切り、それ以外の場所ではマナーモードに設定のうえで通話はご遠慮下さい」だったと思います。
その「混雑時」って、乗客の判断でいいのかな?と思ったので覚えていました。

Pパパ

では、以前はどんなアナウンスだったのかな?

Iちゃん

よく覚えていないけど「優先席付近では電源を切り、それ以外の場所ではマナーモードに設定のうえ、通話はご遠慮下さい」だったかな?

Pパパ

図1 電源OFF条件緩和
図1 電源OFF条件緩和

ほほう。正解、正解。記憶力抜群だね。
ただね、これは全国統一ではないんだよ。このことは後で話すね。
さて、本題に入るが、この2015年10月1日から「電車内の携帯マナーの"電源オフ"の条件緩和」があったんだよ。

Iちゃん

図1に「使う場合は『今まで22cmで、これからは15cm』」ってあるけど、どういうこと?

Pパパ

うんうん、そのことをまず説明するかな。

「電源OFF条件緩和」といったが、これは総務省が2013年1月に携帯電話と心臓ペースメーカー(*1)の離すべき距離の指針を「22センチ程度以上」から「15センチ程度以上」へと緩和したんだ。
その理由は、実測調査では「携帯電話がペースメーカーから3センチ以上離れていれば、誤動作は認められなかった」というんだよ。

Iちゃん

えーっ!3cmなの?
じゃあ、全然問題ないってことじゃないの?

Pパパ

うん、そうなんだが、そのことは後で話すが、実は、この総務省の緩和条件に反応して「マナーの変更」を打ち出したのは、真っ先に京阪電車が2013年3月16日に「優先座席付近では混雑時のみ電源オフ」というルールの緩和に踏み切ったんだ。「顧客の利便性を優先し、マナーを携帯電話の利用実態に合わせた」というんだ。

Iちゃん

あー、そのことなんだ。JRとか鉄道会社でマナー変更はまちまちでバラバラってこと?

Pパパ

そうなんだ。「まだら模様」だね。
それを整理したのが表1だ。

表1 携帯電話の電源OFF条件緩和の鉄道事業者の動き
表1 携帯電話の電源OFF条件緩和の鉄道事業者の動き

Iちゃん

時期がバラバラってことは分ったけど、肝心の「緩和の理由」を教えて!

Pパパ

図2 マナー緩和理由
図2 マナー緩和理由

最大の理由は「携帯電話の使用環境の変化」だね。
携帯電話の発達については、このコラムで何回か触れたが(*2)、まず2012年7月に第2世代(2G)の携帯電話サービスが完全に終了して、第3世代(3G)携帯電話サービスに移行したことだね。

つまり、携帯電話の最大出力の低下だ。
「電波法の技術基準」によると、最大出力は2Gが800mw、3Gが250mwで3Gの方が1/3以下でかなり弱いことだ。

それに3つ目の理由は、

  1. ペースメーカーなどの医療機器も、技術の進化で電波の影響を減じるシールド性能が向上した
  2. ペースメーカーなどの医療機器の素材や回路が耐干渉電波仕様に移行

などの理由によって、誤動作を起こす恐れが大きく軽減したことの3つだね。

小野田君

電車内のトラブルが多発していたことも理由の1つと聞いていますが?

Pパパ

そうだ。
電車内の優先席付近でのトラブルが後を絶たなかったんだね。
例えば、新聞報道(*3)によると、今年の6月に「優先席でタブレットをいじるな!」事件があったんだ。
JR京浜東北線を走行中の電車内の優先席で男性(70歳代)が隣に座ってタブレット端末を使っていた男性会社役員の肩を殴って怒鳴り、刃渡り約17センチの包丁を突き付ける事件が発生したんだそうだ。その70歳代の男性は非番でたまたま列車に乗り合わせていた警官に銃刀法違反容疑で現行犯逮捕されたんだがね。

Iちゃん

わぁ、そんなことがあったんだ!

Pパパ

遡れば、同新聞の報道だが、昨年の12月には、「電車を降りろ!」。相鉄線を走行中の電車内で男性(60歳代)が優先席でスマートフォンを操作していた若い女性に突然、罵声を浴びせかけ、列車の運行を妨害する事件が発生したんだね。この男性は同様のトラブルを昨年4月から計39回繰り返しており、威力業務妨害容疑で逮捕されたそうだ。

Iちゃん

私は遭遇していないけど、そんなに頻繁にあったの?

Pパパ

電車内の優先席付近での携帯電話の使用を巡るトラブルは後を絶たないそうだ。列車が緊急停止し、乗客が逃げ惑うような大きな騒ぎはもちろん、「客同士の小競り合いも少なくない」(鉄道関係者)というし、トラブルの発端になっているのは表1にも示したが「優先席付近では、携帯電話の電源をお切りください」と定めた統一ルールが原因なんだ。そもそも「携帯電話が発する電波がペースメーカーなどに干渉して脈を乱す可能性がある」として2003年に首都圏の17社がこの統一ルールを採用。翌年には関西にも広がり、全国に普及した。先に挙げた2つのトラブルは、この統一ルールが原因で起きたものなんだね。

Iちゃん

そうよね。
「電源を切れ」とアナウンスしているから、使っている人にクレームが出るわよね。
使ったら本当に問題が起こったのかしら?

Pパパ

そう、そこが問題だ。
こうした背景を受けて、総務省が2013年1月に改正して、携帯電話とペースメーカーの離すべき距離の指針を「22センチ程度以上」から「15センチ程度以上」へと緩和したんだ。
実測調査では「携帯電話がペースメーカーから3センチ以上離れていれば、誤動作は認められなかった」というんだよ。

Iちゃん

そうかぁ!
パパの冒頭の解説で「22cmが15センチになった」の話があって、実際には3cmまで問題が無かったって話は、このことね?

Pパパ

そうだ。
もともとのこれまでのルール22cmの根拠は、有識者や業界団体などでつくる民間団体「不要電波問題対策協議会」(現電波環境協議会)が平成9年に定めたガイドラインだったんだ。
当時の実験結果で、電波が医療機器に影響を及ぼしたケースもあったことから、携帯電話からペースメーカーを22cm以上離すことを推奨したんだね。

Iちゃん

でも、3cmなら使っていても他の人とは絶対3cm以上離れるから「優先席で使っても全く問題無い」ってことじゃないの?

Pパパ

そう、そのとおり!
何故、新しい指針が「15cm以上」になったかの理由は「国際ルールが15センチ以上」のままになっているためで、それらを根拠に、混雑時も含めた規制ルールの完全撤廃に踏み切らなかったとみられるているんだよ。

Iちゃん

へー、変なの!

Pパパ

それはね。関係者によると、国際ルールが依然として「15センチ以上」を維持するのは「海外では第2世代の携帯電話を利用する国が多い。日本とは事情が異なっている」ことが理由というんだ。
総務省の指針改訂に向けた作業部会委員を務めた東京女子医大循環器内科の庄田守男臨床教授も、「携帯電話がペースメーカーの誤作動を誘発した事例は一度もない」と指摘してるんだよ。(*4)

小野田君

図3 これからも心配
図3 これからも心配

緩和されても「混雑時の定義があいまい」で、トラブルが起こらないかなぁ。心配だなぁ。

Pパパ

そうそう、その心配はあるね。
「混雑時の定義」を関東、甲信越、東北の37事業者によると、「混雑時とは、お客さまの体同士が触れ合う程度」としているが、状況次第では解釈が分かれることもありえる。それが原因で新たなトラブルが発生する恐れもないわけではないよね。

Iちゃん

そうよ。
「安保法制」じゃないけど「解釈」でいくらも変わるわね。

Pパパ

はっはっは。「安保法制」がでてくるとはね。
しかし、確かにその問題はある。
「ペースメーカー」を使っている人は「完全に誤動作を起こさないわけは無いだろう」と不安に思うだろうし、規制が完全撤廃されるまで、紆余曲折があって「電車内(バスなども)の携帯電話使用マナーは、大きな過渡期に差しかかっているといえそうだね。

ところで、次回にテーマは何にするかな?

小野田君

先日、NTTのリリースをみたら、「固定電話網の今後」についての報道がありました。
我々通信ディーラーにも関係あるし、公衆網利用の一般のユーザーにも関係があるので、少し勉強したいと思っています。
そのことを、次回、私から報告したいと思います。

Pパパ

うんうん、タイムリーで「良いテーマ」だ。
では、頼むよ。

*1
心臓ペースメーカー:心臓の鼓動が途切れたり、一定以上の間隔を超えてしまったりすると、それを察知して電気刺激を心臓に送り、心臓が正常なリズムで鼓動することを助ける「心臓のサポーター」。
*2
携帯電話の話:第95回の「LTEの話」や第104回の「LTEアドバンスの話」や第125回の「5Gの話」等。
*3
新聞報道:日本経済新聞電子版(平成27年10月30日)
*4
出典:産経ニュース(平成27年9月20日)

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