ページの本文へ

Hitachi

第126回 「IoTの話(1)」

IPよもやま話

I(愛)ちゃんとP(パパ)とO(小野田君)の会話が続きます。

イラスト

Iちゃん

今日は、小野田君に出された宿題の「IoTの話」だったわね。

Pパパ

そうだ。
愛ちゃんは他人事のように澄ましているね。

Iちゃん

えー。
聞くだけだから。(笑)

Pパパ

そうか、そういう姿勢なら、今度宿題を出すことにしよう。
小野田君、話を始めてくれないか。

小野田君

はい、では「IoTと何か?」と云う切り口から話を始めます。
前回のお父さんのお話しの様に「IoTとは、Internet of Thingsの略で"モノのインターネット"」ということです。

Iちゃん

それが分らないわ!
「モノ」って何?

小野田君

図1 ネットに接続
図1 ネットに接続

はい。今までのインターネットでは「テレビやデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルオーディオプレーヤー、HDDプレーヤー、DVDプレーヤー等のデジタル情報家電」をインターネットに接続する流れは始まっていますよね。
この他にもインターネットに接続するモノが増えてくるんです。
インターネットに接続するものには、図1のように3つのモノがあります。

Iちゃん

えー!
  「機械」や「その他のモノ」がネットにつながるの?

小野田君

そうなんです。
従来のように人間がパソコン類を使用して入力したデータ以外にモノに取り付けられたセンサーが人手を介さずにデーターを入力し、インターネット経由で利用されるようになるんです。

Iちゃん

そうするとどんな「いいこと」があるのかしら?

小野田君

様々なモノ、機械、人間の行動や自然現象は膨大な情報を生成しているよね。これらの情報を収集して可視化することができれば様々な問題が解決できるんです。見ることや聞くこと触ることができる情報はもちろんですが、それらができない情報もセンサーにより数値化されて収集可能になるんです。

Iちゃん

イメージは湧かないわ。
具体的にはどんなシーンになるの?

小野田君

図2 IoTはこんなことが出来る
図2 IoTはこんなことが出来る

従来のように人間がパソコン類を使用して入力したデータ以外にモノに取り付けられたセンサーが人手を介さずにデーターを入力し(通信機能を持つ)、インターネット経由で利用されるものなんですが。例えば、ドアが「今、開いているよ」とか、猫が「今寝ているよ」とか、植物が「喉が渇いたよ」等とつぶやき始める、といったこれらの情報をインターネットを介し様々な場所で活用することができ るんだよ。

Iちゃん

そうなんだ。
「モノ」に各種センサーをつけて、その状態をインターネットを介してモニターしたり、インターネットを介して「モノ」をコントロールできるってことよね。

Pパパ

そうだ。
理解が早いよ!

Iちゃん

でも、インターネット(IP網)に接続するなら「IPアドレス」が必要でしょう?

Pパパ

ほほう、凄い凄い、いい質問だ。
さあ、小野田君はドウ答えるかな?

小野田君

そうです。
待っていた質問です。
アドレスは必要なんです。
いままで、IoTが実現しなかったのは、IPv4ではIPアドレスの数自体に制限があったからだとも言えるんです。
以前勉強した(*1)ように、IPv4におけるIPアドレス数は43億個、つまりスマートフォンがこのまま普及していってもIPアドレスを全人類に振り当てることさえできないんですよね。モノに振るどころではなかったんです。

Iちゃん

そうか、IPv6になってIPアドレス数は340澗(かん)個だったわよね。
澗は10の36乗だから無尽蔵に近いって以前パパに教わったわ。

Pパパ

凄い。その通り。理屈上でいえば、我々の目に見えている地球上の物体すべてにIPアドレスを与え続けても数百年は持つと言われるくらいだ。

小野田君

そうですね。
アドレス数の問題は無いのですが、実は、インターネットに接続するためには、接続させる仕組みと電源も必要なんです。

Iちゃん

あら、じゃあどうするの?
猫に電源は無理でしょう?
でもないか、センサーにバッテリーを積めばいいんだよね。

小野田君

そうです。
でも、今すぐに猫をインターネット化する必要があるわけでもなく、先ずは「すでにWi-Fiと電源の問題をクリアしたモノのインターネット化」を実現すればいいんです。
例えば、家電や自動車、家そのもの、もしくは車や信号機でもいいですね。ハイテク商品や設備などを常時インターネット接続させることをまず優先するんです。

Iちゃん

モノをインターネットに接続すると、どんなことが出来るの?

小野田君

さっき、離れた場所の状態を情報として知ることができるって説明したけど、整理すると
1、離れた場所の状態を知りたい→離れた"モノ"の状態を知ることができる
2、離れた場所の状態を変えたい→離れたも"モノ"を操作する
の2点だね。

Pパパ

図3 IoTの市場規模予測
図3 IoTの市場規模予測

最近、"IoT"のキーワードが頻繁に新聞や雑誌等を賑わせているが、今後の市場規模など調べたかな?

小野田君

はい、最近の新聞情報(*2)によると、図3のように物凄い予測になっていますね。
東京オリンピックの2020年には、何と2014年の2.6倍の205兆円(1兆7000億ドルになるというんです。

Iちゃん

凄いわね。
新聞なんかよく読んでいるんだ。

Pパパ

そうだ。
愛ちゃんもたまには新聞も読むんだね。

Iちゃん

ちゃは、余計なこと言っちゃった。やぶ蛇だったわ。

小野田君

別の資料もあります。
総務省の資料(*3)による「IoTのデバイス数」についてですが、2020年時点で530億個になるとの予測です。2015年時点でさえ242億個あり、5年でほぼ2倍。
各マーケティングアナリストもさまざまな数値を予測しているが、今後予定されている国家的イベントやAI(人工知能)の普及が拍車をかけ、その予測数値はさらに膨らむようです。

図4 IoTの市場予測(総務省)
図4 IoTの市場予測(総務省)

Iちゃん

数が増えて市場規模が大きく膨らんでくるってことは分ったけど、中身はどんな風になっていくの?

小野田君

白書を見る限り、自動車や医療はIoT普及の初期段階ですが、今後はこれらの分野でも、組み込まれた多くのデバイスがインターネットにつながるようになるようです。
また、すでに産業や家電などのコンシューマー分野ではIoTデバイスは合わせて100億個以上となっており、特に産業分野では年率でも20%以上の伸びが予測されています。

Iちゃん

そうなんだ。

小野田君

図5 大きな伸びは自動車
図5 大きな伸びは自動車

そして、最も大きな伸びが予測されているのは自動車分野で、自動運転の普及をにらみ、IoTデバイスで重装備された自動車が登場する日も近いと思われます。道路側のIoTやビッグデータ技術もますます進んでいくと見られています。

Iちゃん

そうだ!
小野田君!前回の勉強会でパパから「5GとIoTについて勉強してくるように」って言われたわよね。その宿題やってきた?

Pパパ

はっはっは。
愛ちゃんは偉そうだね。自分は宿題がないから余裕綽綽だね。

小野田君

はい、調べました。
こんな予見があります。(*4)
「2020年には300億〜500億のモノがインターネットに接続するIoT(Internet of Things)時代になる。5G(第5世代移動通信)はモノ同士が接続する時代をサポートする」──。
これは、ある講演からのピックアップですが、その意味は、一例として「クルマの自動運転を実現するのに、1Gビット/秒の通信速度が必要で、多数のクルマ同士、あるいはクルマとインフラ間で通信する技術がいまは存在していないことが、5Gによって実現する」と云うんですね。

Pパパ

うん。
IoTへの対応を打ち出した「5G」、そしてクルマや家電との連係が視野に入ってきたってことだね。5G は、スペクトル効率(デジタル通信システムにおいて、与えられた帯域幅で転送可能な情報の総量) によって、IoTの効果と効率を引き出すんだよ。

小野田君

そうですね、「2020年までには5Gが世界中に普及して、約500億個の「モノ」が相互接続(IoT)するようになるともいわれています。たとえば、人の運転を必要としない自動運転車は、信号やスマートシティーのセンサー・ネットワーク、知能を持つ賢い家電製品、産業オートメーション・システム、ネット対応のヘルス製品、個人用ドローン、ロボットなどのモノとコミュニケーションするようになります」という講演資料もあります。(*5)

Iちゃん

パパ、「IoTは最近よく使われるキーワード」って言ったけど、新語なの?

Pパパ

いやいや、もう15年も前から登場している言葉だが、ここへきてIT業界がこぞって注目してきたんだ。期が熟してきたってとこかな。

小野田君

「IoT」を愛ちゃんに分り易く説明すると「インターネットの進化した新しいバージョン」と言っていいと思います。
最後に、最近の動きといくつかの事例を表に纏めてきました。

表 IoTシステムの事例紹介
企業名等 システム 内容
1 ベイシアグループ
(佐倉店)
店舗IoTシステム 店内に設置した50数個のセンサーで店内の客数とレジで待つ顧客の組数を把握し、過去のデータをもとにレジに並ぶ顧客数を予測し、レジを開閉したり顧客を誘導したりして顧客の不満を減らしている。
2 コマツ 機器監視IoTシステム 場所、エンジン稼動の有無、燃料残量、稼動時間が事務所から把握できる。
3 スペイン・バルセロナ市 バーチャル市役所 欧州では初となる仮想市民サービス、つまりバーチャルの市役所を作り出している。
4 シーテック展示1
(キンキ日本ツーリスト)
観光案内 観光スポットでメガネ型端末をかければ、その場の過去の景色が再現される技術を紹介。
5 シーテック展示2
(楽天)
ネット通販 電子看板に映し出された商品を、スマホを通じて購入できる仕組みの展示。
6 最近の国の動き 産官学で研究体 「モノにネット(IoT)」を新産業にするべく共同研究タイを10月23日に発足させた。

(補足)シーテックは、平成27年10月7日〜10日開催のもの。

Pパパ

うんうん。よく勉強してきたね。次回のテーマはどうしようかね?
小野田君、表の6項は最近動きが「国」のレベルにまで発展していることを示していて重要な動きだね。このこと、つまり「IoTが新産業」になる、という切り口でもう少し「IoT」について勉強して報告してくれないか。

小野田君

分りました。
新聞報道もありました(*6)し、もう少し勉強して報告します。

*1
IPv4とIPv6の話:本コラムの第43回〜45回で解説済み。
*2
IoTの市場規模予測:IDCの予測で、出典は読売新聞朝刊(平成27年10月7日)
*3
総務省資料:平成27年版情報通信白書
*4
講演:スペイン・バルセロナで3月上旬に開催された世界最大のモバイル展示会「Mobile World Congress(MWC)2015」。2日目の「The Road to 5G」と題したセッションで中国ファーウェイの輪番CEO(最高経営責任者)兼取締役副会長の胡厚崑(ケン・フー)氏。
*5
講演:インテル・デベロッパー・フォーラム (IDF)で、エバンスとバイス・プレジデント兼インテル・ネットワーク・プラットフォーム・グループ・ジェネラル・マネージャーのサンドラ・リベラ(2015年8月18日〜20日インテル・デベロッパー・フォーラム)
*6
新聞報道:読売新聞朝刊(平成27年10月12日)

日立システムズフィールドサービスのサービス・商品に関するお問い合わせ

お電話でのお問い合わせ 0120-152-750 9:00〜17:00(土・日・祝日は除く)

Human*IT